ジョン・メイオールの最高傑作アルバムは何かと問われれば、私なら迷うことなくこのアルバムを推薦します。白人が演奏してきたブルースロックのなかで、ここまでレイドバックしたブルージーなアルバムが他にあるだろうかと思ってしまいます。

英ブルースロックの雄ジョン・メイオールは、デビュー以来一貫してバンド編成で演奏してきました。それはLPレコードにも反映されていて、エリック・クラプトンの参加したセカンド・アルバム以降も、ミック・テイラーにピーター・グリーンと、常に英ブルースロックを代表する名ギタリストが参加、名バンドとしての地歩を固めていきました。そんなジョン・メイオールが、ほとんどすべての楽器をひとりで演奏して完成させたアルバムが、『The Blues Alone』です。

今回は、1967年発表の通好みの大名盤『The Blues Alone』を取り上げさせていただきます。

■これぞジョン・メイオール流!戦前のアコースティック・ブルースを独自の解釈で

このレコードで、ジョン・メイオールは今まで演奏してきたバンド・ブルースではなく、アコースティックを基調とした戦前ブルースの色を強めました。しかも、カバーは一切せずに全曲ジョン・メイオール作曲です。

言い換えると、このレコード登場以前のほぼすべての英ブルースロックが、R&Bを含むシカゴ・ブルースやモダン・ブルースのようなビートの強いバンド・ブルースを志向していたのに対して、このレコードでジョン・メイオールはビートよりニュアンス表現に優れたアメリカのアーリー・ミュージックを志向したことになります。そして全曲がオリジナル、しかも独特なアレンジを施す事で、失われた古典を発掘し、なおかつのその先を見事に描き出したといえるのではないでしょうか。

■極限まで楽器数を減らしたからこそわかる、見事な演奏表現

このレコードでジョン・メイオールは数多くの楽器を演奏していますが、とりわけハーモニカとピアノの演奏は抜群の表現力です。極限にまで音数を絞り込んだ冒頭曲「Brand New Start」の見事なハーモニカなど、ビート・ミュージックの中で演奏されていたら、ここまで細かい演奏表現のニュアンスなど消えていたでしょう。同じことが、「Down The Line」のピアノにも言えます。

独特のセンスで再構築された戦前ブルースの進化形、それがこのレコードではないかと思います。

■レコード高価買取に関するあれこれ

これまでのジョン・メイオールのレコードはデッカからリリースされてきましたが、『The Blues Alone』はデッカ内レーベルであるAce of Clubs からリリースされました。このレーベルはクラシックやジャズ、ブルースといった比較的古典的な音楽をリリースしてきたこともあり、このレコードをロックと差別化する目的があったのかも知れません。

そのような理由から、67年リリースのオリジナルUK盤はAce of Clubs ロゴがジャケット左上に入っています。実売価格はまちまちで、手に入れやすい値段で入手できることもありますが、状態が良いとさすがにいい値段がつく事が多いです。

一方のUS盤はレーベル表記がLondon になります。このレーベルロゴは時代によって変わり、67年盤は黒文字盤です。さらに、ヨーロッパ盤はDecca レーベル表記となり、国や時代によってデザインが異なります。一例としては表ジャケットの写真自体が異なるものもあります。

面白いのは69年の日本盤で、ジャケットの写真は同じものの久保ブチの入った独特なデザインとなっています。恐らくこの珍しいジャケットのためでしょう、意外と高額をつける事がある珍品です。

もし、ジョン・メイオールのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。