キーボードを使わず、ギター1本でほとんどのオーケストレーションを作ってしまう正真正銘のギターロックバンドがシーナ&ザ・ロケッツです。1978年にギター/作曲の鮎川誠を中心に結成、ギター・ベース・ドラムスというロックバンド最少人数編成からパンクと言ってよいほどに攻撃的なロックンロール・サウンドを繰り出し、ヴォーカルは鮎川誠の妻シーナが務めました。キッチュでパワフルな魅力を爆発させたヴォーカルのシーナは、残念ながら2015年に子宮頸癌で世を去りましたが、バンドは以降も活動をつづけ、日本のロックとしては異例の長寿バンドとなっています。

今回は、シーナ&ザ・ロケッツの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただこうと思います。

■#1 (Elbon, 1979)

シーナ&ザ・ロケッツのデビューアルバムです。パンクもハードロックも通過したうえでストレートなロックンロールを押し出した内容で、疾走感にあふれています。

このアルバムにはシーナ&ザ・ロケッツのライブの定番ナンバー「レモンティー」が収録されていますが、これはヤードバースの演奏で有名な「Train Kept a rollin’」の実質的なカバー。より正確にはフォガットによるアレンジのコピーですが、ドライブのきいた鮎川誠のギターの切れ味たるや強烈です。ちなみに、「レモンティー」は鮎川が以前に在籍したバンドのサンハウスがデビューアルバムですでに発表しており、シーナ&ザ・ロケッツのメンバーはヴォーカルのシーナを除いてすべてサンハウス出身者でもあります。

インディーズレーベルからリリースされたこともあり、79年リリースのElbon盤は5000円超えが普通、帯つき備品となるとさらに高額となる貴重盤です。また、Elbon 盤の帯には「鮎川誠シーナロケット」とクレジットされており、日本での呼称が定まっていなかった様子を窺い知ることが出来ます。Elbon 盤ほどではありませんが、86年のVivid Sound によるリイシューLPレコードも人気は低くありません。また、90年代以降に2度リイシューされたCDもレア度が高く、5000円越えとなる事も少なくありません。

■真空パック (Alfa, 1979)

デビューレコードと同じ79年、アルファレコードと契約してリリースされたセカンドアルバムです。このレコードからシングルカットされた「ユー・メイ・ドリーム」はバンド最大のヒット曲となり、バンドはこれで一気にスターダムにのし上がりました。

当時のアルファレコードは荒井由実やサーカスといったニューミュージック系のレコードを数多く発表しており、フォークまたは歌謡曲が主流であった日本のポピュラー音楽シーンの先端を走るポップ・レーベルでした。レーベルにはテクノサウンドで大ブレイクを果たしたYMOも在籍しており、その関係からか本作の制作にYMOのメンバーが大きく関わる事となりました。「ユー・メイ・ドリーム」をはじめとした多くの曲がニューウィヴ的な色彩を帯びているのはYMOの参加によるもの、ポップロック調の曲が増えた事はレーベルのカラーだったのかも知れません。

名盤として知られる本作、79年リリース当初はメンバーがラップされているジャケットでした。ヒットしたアルバムなので市場に十分な出回り数があるのか、そこまでの高額化はしていませんが、それでもそれなりの価格がついています。79年盤には盤面がグレイのカラーレコードも存在し、これは若干高めに評価される事があるようです。

このジャケットデザインが問題となったか、翌80年の再プレス時にはジャケットが差し替えとなりました。そしてこの差し替えジャケットは81年のアメリカ発売アルバムに流用される事になります。

■Channel Good (Alfa, 1980)

アルファレコード移籍第2弾アルバムです。『真空パック』に続いてプロデューサー/キーボーディストとしてYMOの細野晴臣が参加していますが、前作ほどには深く音楽に手出しする事がなく、いわばパンク/ロックンロールのデビュー・レコードの勢いと、テクノ/ニューウェイヴのセカンド・アルバムの完成度の双方を兼ね備えたアルバムと言えるのではないでしょうか。ドクターフィールグッド級のカッティング・ギターが炸裂する「TAIKUTSU NA SEKAI 」の疾走感は、ライブバンドとしての実力を示す屈指のパフォーマンスでした。

中古レコードの価格としてはあまり評価の高くないアルバムですが、音楽的には本作がシーナ&ザ・ロケッツ最高傑作と思います。

■Sheena & the Rokkets (A&M, 1981)

アメリカのA&Mがシーナ&ザ・ロケッツにほれ込んでリリースが決まった全米発表アルバムです。日本で発表された音源からセレクトされていますが、「ユー・メイ・ドリーム」が英語で歌われるなど、このレコードならではの魅力もあります。なお、アメリカではシーナ&ザ・ロケッツが「日本最高峰のパンクバンド」と紹介されたことがありました。

ただでさえ出回り数が少ない上に、日本にはあまり入ってこなかったため、A&Mオリジナル盤はレア度が高く、レコード業者の買取りでも高額必至のアイテムです。

■シナロケのレコード買取り価格の高いものは初期のレア盤に集中

「邦楽ロックは売れない」と言われる日本で40年以上も活躍し続けている驚異のバンドですが、コンスタントにアルバムを発表し続けたのは89年までで、以降は散発的なアルバム発表となっています。レコードの買取り価格が高くなるものは、やはり入手の難しいインディーズ時代のファーストや、アメリカ発売のA&M盤などの初期のレア盤で、次いで『真空パック』などの人気作が一定の値段がつくようです。

もしシーナ&ザ・ロケッツのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。