■昔と今ではオーディオセットの仕様が違う

新譜がアナログ盤で発表されていた頃にLPレコードを聴いていた世代の方は、LPレコードを聴くためにさほど苦労されなかったのではないでしょうか。オーディオセットを買ってくれば、とくに専門的な知識を必要とする事も無く、簡単にレコードを聴く事が出来ていたからです。

しかし今は状況が違います。いま現行で発売されている手頃なオーディオコンボを買ってきたとしても、簡単にレコードを聴く事が出来ません。理由は、レコードプレイヤーを使うことを想定していないためです。そうしたコンボにレコードプレイヤーを直接繋いだとしても、まともな音は出ません。音量が小さく、低音がない、妙な音がするはずです。

なぜこのような事が起きるのでしょうか。理由は、レコードプレイヤーの再生にはフォノイコライザーという装置が必要だからです。LP全盛の時代には、フォノイコライザー内蔵のオーディオコンボやアンプが多く作られていたのですね。しかし現行で発売されている手頃なオーディオコンボには、フォノイコライザーが内蔵されていないのです。もちろん昔も、単体で高額なオーディオセットを揃えていくと、フォノイコライザーは必要だったのですが。

■レコードプレイヤーの再生に必要なもの

昔と違って、今からLPを聴こうとするなら、オーディオの専門知識が少しだけ必要です。まずは基礎知識として、レコードプレイヤーを聴くために必要なオーディオ機器を紹介します。大きく分けて、以下の4つです。

  • レコードプレイヤー+レコードカートリッジ
  • フォノイコライザー
  • アンプ(プリメインアンプ、パワーアンプ)
  • スピーカー

レコードプレイヤーは、LPレコードを載せるターンテーブルの付いた装置の事です。付随して書いたレコードカートリッジとは、レコードプレイヤーのうち、レコード針のついたパーツ部分の名称です。わざわざ別記した理由は、レコードカートリッジには種類があるためです。この件については後に改めて書きます。

フォノイコライザーは、アナログ盤の仕様に合わせて加工されて記録された音を、まともな音声信号の状態に戻すための装置です。レコードプレイヤーとアンプの前にこの装置を挟む事で、レコードを聴く事が出来るようになります。

アンプとスピーカーについては、他のオーディオ機器の再生と同じですので、説明は省きます。オーディオの音はどこが悪くても音が劣化するためにすべて良い装置を揃えるのが理想ですが、特にアンプとスピーカーは良いものを揃えれば一生ものですので、最初にお金をかけるとすればここからにすると良いかと思います。

■フォノイコライザーについて

さて、本題のフォノイコライザーについてです。なぜフォノイコライザーが必要なのでしょうか。原因は、レコード盤の構造にあります。

アナログ盤は、盤に刻まれた溝にレコード針を這わせ、溝の凹凸を拾って電気信号化します。溝と音の関係を簡単に説明すると、溝の幅が広いほど低音となり、狭いほど高音になります。しかし、音情報をそのまま盤に刻み込んでしまうと不具合が起きます。溝の幅が広がりすぎるとレコード針が大きく揺す振られて溝から飛び出してしまい、逆に溝の幅が狭すぎると微小すぎて音が盤面のスクラッチノイズと混ざってしまうのです。そこで、アナログ盤は、低い音は実際よりも小さく、逆に高い音は実際よりも大きく刻んであるのです。

フォノイコライザーは大きく分けてふたつの仕事をします。第1は、このように加工されて盤に刻まれた音を正しい状態に戻す事です。変更された帯域カーブを「RIAAカーブ」と呼び、再生時にこのカーブを実際の音の状態に戻すわけです。

フォノイコライザーのもうひとつの役割は、電気信号の増幅です。CDなどの出力に比べ、アナログ盤の出力は非常に小さいものです。そのため、音量を増幅する役割もフォノイコライザーは担っています。

■レコードカートリッジのMM型とMC型について

フォノイコライザーを導入する際に、気をつけなければならないことがあります。ここに、レコードカートリッジの形状が関わってきます。

カートリッジとは、レコードプレイヤーのトーンアームの先についた針のついたパーツ部分で、ムービング・コイル型(MM型)とムービング・マグネット型(MC型)の2種類があります。厳密には他にもあるのですが、このふたつが主流です。名前の通り、両者の違いはコイルが動くかマグネットが動くかという構造にあります。

電気的な説明を抜きにして両者の違いを説明すると、MM型は針だけを交換できる、MC型はゲインが低くカートリッジごとの交換になるものの音が良い、このように思っておけば、ことレコードを聴くには十分でしょう。

MC型とMM型はゲインが違うので、それぞれに対応したフォノイコライザーを使う必要があります。MC型とMM型の双方に対応できるように作ってあるフォノイコライザーが多いですが、そうではないものもあるため、導入には注意が必要です。

■RIAAカーブだけではないフォノイコライザーの世界

最後にちょっとした雑学を。さきほど、アナログ盤の補正カーブをRIAAカーブと呼ぶと説明しましたが、昔はいろいろな種類があったようです。それが50年代なかばあたりから、各レコードメーカーが徐々にRIAAカーブに移行していったという事のようです。米Columbia のレコードは通称Columbiaカーブ、ジャズの古いブルーノート盤はAESカーブ。他にもDeccaカーブ、MGMカーブと呼ばれるものもあります。

ビートルズのCAPITOL盤レコードは音が悪いと言われていますが、実はRIAAカーブによるEQ補正で聴くからそう感じるのであって、Capitolカーブで再現すると良い音で聴くことが出来るのだそうです。ただし、今Capitolカーブで再生しようと思うと、それなりの出費が必要になります。

アナログ盤の世界は奥深いですよね。独特の温かみある音など、嵌ると素晴らしい趣味でしょうが、LPを再生できるオーディオ装置をすでに手放し、また今から新たに買い揃えるのがもう億劫という方は、お手持ちのLPを次の世代の方に手渡して行くのもひとつの方法かと思います。そんな方は、レコードの買い取り業者をご利用くださいね。

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