1969年のイギリスで、それまでのロックからは想像もつかないほどの音楽的なクオリティと高度な内容をもつアルバムが発表されました。『In the Court of the Crimson King』、この後に破竹の勢いでロックの歴史を塗り替えることになるキング・クリムゾンのデビュー・アルバム・レコードです。

『In the Court of the Crimson King』が発表された1969年から、バンドが解散する1974年までの5年間で、キング・クリムゾンは驚異的な内容を持つアルバムと素晴らしいライブ・パフォーマンスを残しました。以降、80年代、90年代、00年代と、キング・クリムゾンは幾度となく再結成されましたが、音楽的に最も高度であったのは、70年代までのキング・クリムゾンではないでしょうか。

今回は、最初の解散となる1974年までのキング・クリムゾンのアルバムのうち、名盤レコードの評価を受けるとともに、高額での買い取りが見込めるレコードを紹介させていただきます。

■In the Court of the Crimson King クリムゾン・キングの宮殿 (1969)

1962年のビートルズのレコード・デビューによって、ブリティッシュ・ロックが時代を席巻しました。1966年にクリーム、1968年にディープ・パープルと、日進月歩でそのクオリティを高めていきましたが、楽曲はアメリカン・ソングフォーム(歌謡形式)に留まり、またアンサンブルもバンドの範囲を超えられない状態でした。そうした中、1969年に登場したキング・クリムゾンのデビュー・アルバム『In the Court of the Crimson King』は、これらを一気に超えてしまう内容を持つ驚異の音楽でした。

管弦楽法を踏まえたオーケストレーション、メンバーの中に詩人を入れる、キング・クリムゾンの代名詞ともなった曲「21世紀の精神異常者」での驚異的な演奏能力など、このアルバムのクオリティの高さは、21世紀になった今でも色あせる事がありません。ロック史に永遠に残る大名盤レコードではないでしょうか。

最初の解散までのキング・クリムゾンのレコードは、アイランド・レコードがディストリビューターとなりました。以降、権利やディストリビューターが変遷していくため、レコードのレーベルやマトリクスが大きく変遷していきます。初期の英オリジナル盤のレーベルはアイランドの赤ラベル(実際にはややピンクに近い)で、赤レーベルというだけでも高額必至です。また、アイランド赤レーベルの中のマトリックス1となると70~100万円クラス、マトリクス2でも7~10万円がつく状態となっています。

これほどの超プレミアとはならないまでも、『In the Court of the Crimson King』は人気盤であるだけに、悪くない状態のアナログレコード盤であれば、なかなかの価格で取引されています。

■Lizard リザード (1970)

キング・クリムゾンのサード・アルバムです。最初の解散までのキング・クリムゾンはメンバーの出入りが激しく、音楽性がアルバムごとに変わっていきますが、大きく分ければ69~71年はクラシック色が濃く、72~74年は現代音楽とジャズ/インプロヴィゼーション色が濃くなります。そして、クラシック調クリムゾンの最高傑作は、実は『In the Court of the Crimson King』ではなく本作なのではないでしょうか。レコードB面に収録された組曲「Lizard」は、シンフォニック・ロック屈指の名曲です。

英オリジナルとなるアイランド盤レコードは、このアルバムからレーベルのデザインが変わって赤レーベルではなくなり、島の図柄となります。以降はEGロゴ盤など、さまざまなレーベルの再発盤が存在しますが、やはり高額がつきやすいのは初期の島レーベルのものです。

■Larks’ Tongues in Aspic 太陽と戦慄 (1973)

あまりに有名なため、キング・クリムゾン最高傑作が『In the Court of the Crimson King』とされる風潮は、昔から存在します。しかし、キング・クリムゾンが音楽面で最もハイレベルな域に達したのは、1973年から74年の時期ではないでしょうか。

この時期に作られたスタジオ・アルバムは、『Larks’ Tongues in Aspic』、『Starless and Bible Black』、『Red』の3つがあります。ホールトーンを使用してのインプロヴィゼーション、ディミニッシュ・サウンドを含んだ8音音階をベースにした曲、ミニマル・ミュージックのような並行して進行するふたつの拍子など、どのアルバムもロックではまだ未知であった領域に踏み込んだ音楽が含まれており、3作すべてが名盤の名に値する傑作です。本作で言えば、パート1と2を含め20分を超える「Larks’ Tongues in Aspic」をはじめて聴いた時の衝撃は、今でも忘れられません。

このアルバムは、バージョンによってジャケットデザインに違いがあります。分かりやすいのは表紙の枠線で、これが高額となりやすいオリジナル・レコード盤の見分けやすい方法にもなっています。

■AREAやTAGERINE DREAMに並ぶロックの最長不倒

ピンク・フロイドやイエスらと共にプログレッシヴ・ロックというジャンルを定着させたキング・クリムゾンですが、演奏、作曲技法、モダン・アンサンブルというトータルの音楽レベルで評価すれば、70年代までのキング・クリムゾンは、イタリアのAREA(アレア)やドイツのTAGERINE DREAM(タンジェリン・ドリーム)と並ぶロックの最長不倒であったように感じます。それは、21世紀に入ってしばらく経過した今もなおそうなのではないでしょうか。

キング・クリムゾンのレコードはヴァリエーションが多いため、手放そうと思った時にその価値を正しく見極める事が難しいです。もし、キング・クリムゾンのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門のレコード買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。