日米安全保障条約の更新をめぐって日本が揺れた1970年に結成、黎明期の日本のロックを代表する名バンドのひとつとして活躍したのが頭脳警察です。

よど号ハイジャック事件を起こした赤軍派のメンバー上野勝輝の書いた「世界革命戦争宣言」を朗読するなど、音楽そのもの以上に、活動姿勢そのものがパンクなバンドでもありました。独特のバンド名は、フランク・ザッパの曲「Who are the brain police?」から取られ、頭脳警察のメンバーであったヴォーカル&ヴォーカルのパンタも、ドラム&パーカッションのトシも、頭脳警察解散後も現役で音楽活動を続けています。

今回は、そんな頭脳警察のレコードアルバムのうち、名盤レコードの評価を受けるとともに、高額での買い取りが見込めるレコードを紹介させていただきます。

■幻野 幻の野は現出したか〜’71日本幻野祭 三里塚で祭れ (1971)

戦後、インフラの整備を急ぐあまり、成田空港の建設は住民の立ち退きや騒音問題などが十分に解決されないまま進められました。これが社会問題に発展、成田空港の建設反対運動の一環として行われたコンサートが、「’71日本幻野祭」です。本作はそのライブ録音盤です。参加ミュージシャンは、ロック系からは頭脳警察、ブルース・クリエイション、ロスト・アラーフなど。フリー・ジャズ系からは高柳昌行ニュー・ディレクション、高木元輝トリオなど。いずれ錚々たる参加アーティストですが、その中で最も多く収録されているのが、まだレコードデビューを果たしていなかった頭脳警察でした。

このコンサートの中で、頭脳警察のパンタは「投げろ、ニップル爆弾」などの文言で聴衆をアジテーションしますが、安保闘争に加わっていたと思われる観客の会話には「口だけじゃ駄目だと思うの」などといった辛辣な声が聴こえるなど、このレコードの編集者の意思だけでなく、当時の学生運動の様相が表も裏も記録されたリアルさがあります。

幻の名盤として、昔から高額で取引されていた貴重なレコードです。見つかれば万単位は当たり前、状態が良ければ十万単位の値がつく事も普通にあります。1989年に、一部を抜粋してCD化。のちにようやくLPレコードと同音源をフル収録してのCD化が行われ、ようやく耳にすることが出来るようになりましたが、今ではそのCDですら万を超える価格でプレミア化している状態です。

■頭脳警察1 (1972)

頭脳警察のファースト・アルバムです。レコードにもなった幻野コンサートをはじめ、頭脳警察のパフォーマンスはレコードデビュー前から70年安保闘争下の学生たちの間で評判となっていて、満を持しての登場がこのアルバムとなる筈でした。

頭脳警察の演奏は、後のロック・バンド形態ではなく、フォーク・ギターとパーカッションというシンプルな編成での弾き語りです。当時の流行であったフォークあるいは反戦フォークの形式に近く、それだけに音楽以上に詞に耳を奪われます。前述の「世界革命戦争宣言」や「銃をとれ」のほか、「赤軍兵士の詩」「彼女は革命家」といった楽曲の詩は、70年安保という特異な状況で生まれたプロテスト・ソングの様相です。

このファースト・アルバムは、ジャケットに三億円事件の犯人のモンタージュ写真があしらわれたばかりか、赤軍派を含む過激な詩なども問題となり、発売元となるはずだったビクターが発禁とした幻の1枚でした。その後、75年に自主制作盤として少量がプレスされ、これは大変なプレミア盤となりました。以降、2001になってようやく公式に発表されましたが、今ではその際のLPレコードも高額がつくプレミア・レコード状態となっています。

■頭脳警察 / 2nd Album (1972)

正確なタイトル表記が判然とせず、「2」「セカンド」などと表記される事がありますが、オリジナル・アルバムのジャケット表記に従い、ここでは「2nd Album」とさせていただきます。

『幻野』が入手困難、『頭脳警察1』が発禁のため、実質的にはこれが頭脳警察のデビュー録音と言えるかもしれません。編成が一新し、レス・ポールの太い音に激しく歪んだエレキ・ギターを中心に、エレキ・ベースにドラムという編成となり、これが黎明期の日本のロック・バンドという強いイメージにつながった事を考えると、ある面では幸運なことだったのかも知れません。また、過激な内容を持つプロテスト・ソングで話題を集めたバンドながら、ヘッセの詩を用いた「さようなら世界夫人よ」など、実は美しい曲を含めた音楽の幅が広かったバンドであることも、本作レコードを聴くとよく分かります。

■Jロック黎明期のバンドは、アナログレコード盤が注目

さすがは熱い音楽を多数輩出していた黎明期Jロックの名バンドだけあって、頭脳警察のレコードは今も人気が高いです。『幻野』や75年の自主制作ファーストは極端な例ですが、以降のセカンドやサードもアナログ盤の人気が高く、一定の価格で取引されています。

もし、頭脳警察のレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。