モダン・ジャズ黄金時代を築き上げたハード・バップが明確にアップライズしたのが、アート・ブレイキーやクリフォード・ブラウンによる55年バードランド・セッションだとすれば、主役はアフリカン・アメリカンであり、白人が中心に君臨したウエスト・コースト・ジャズとは対照的です。そんな中、白人であるジャッキー・マクリーンはハード・バップのアップライズ翌年にリーダー・アルバムを発表、白人随一のハード・バッブ・アルティストとしてシーンに登場します。以降、まだそのイディオムを吸収した管楽器奏者が少ない中でチャーリー・パーカーを吸収した驚異のインプロヴィゼーションを聴かせ、プレスティッジやブルーノートというジャズの名門レーベルから次々にアルバムを発表、白人バッパーの頂点とも言える存在となりました。

しかしモダン・ジャズの黄金時代は長いものではなく、ハード・バップは次第に影を落としていきます。そうした中、ジャッキー・マクリーンが辿った音楽の軌跡は挑戦と超越の連続。素晴らしいアルバム群を生み出す事になりました。

今回は、ジャッキー・マクリーンの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■Jackie McLean / Presenting… Jackie McLean (Ad Lib, 1955)

日本でもっとも良く聴かれたジャッキー・マクリーンの演奏は、マル・ウォルドロンのリーダー・アルバム『Left Alone』での演奏でしょうが、その演奏より4年前に、マクリーンとウォルドロンは録音を残しています。それが、ジャッキー・マクリーンのソロ・デビュー・レコードとなったこのアルバムで、デビューにしてハード・バップをきわめたような見事な演奏を披露します。

この時マクリーンは24歳。アルバム冒頭にいきなり決めてくる高速チューン「It’s You Or No One」での見事なツーファイヴ・モーションは既にチャーリー・パーカーの煌めき、ラストを飾る「Lover Man」は、アーティキュレーションもラインも若者とは思えない老獪さすら見せます。

レーベルがマイナーであった事から知名度は今ひとつですが、ある程度ジャズを聴きこんだ人からは常に高く評価されてきたレコードでます。キャノンボール・アダレイやエリック・ドルフィーなど、イーストコースト・ジャズのアルトがアフリカン・アメリカンによる寡占状態だった中、恐るべき白人アルトがここに登場しました。

■Jackie McLean / 4, 5 And 6 (Prestidge, 1956)

デビュー・レコードが評判を呼んだか、ジャッキー・マクリーンは翌年にジャズの名門レーベルであるプレスティッジと契約を結ぶことになります。これはプレスティッジ移籍第2弾となったアルバムで、メンバーの多くが据え置き、マル・ウォルドロンやドナルド・バードとの盟友関係は続きました。

デビュー・レコードが剛だとすれば、このレコードは柔。よりリラックスした演奏が増えます。その中で注目は、チャーリー・パーカー「コンファメーション」を取りあげた事で、56年の時点で白人のアルティストからパーカーの高速ナンバーを演奏するものが現れた事、ここに大きな意味があったのではないでしょうか。昔から、ハード・バップ期マクリーンを代表する名盤として知られているレコードでもあります。

■Jackie McLean / Jackie’s Bag  (Blue Note, 1961)

 ブルーノート移籍第一弾アルバムです。59年のセッションと、ティナ・ブルックスを含む60年のセッションのふたつが含まれ、両セッションの対比が見事です。盟友ドナルド・バードを含む59年セッションは、デビュー・アルバム『Presenting… Jackie McLean』に優るとも劣らぬ快演で、バードに至ってはキャリア・ハイといって過言でないではない切れ味の演奏を聴かせます。一方、ティナ・ブルックスを含む60年セッションは、モードを含む新主流派的な音楽が3曲中2曲を占め、マクリーンが60年代ジャズに対応し始めた様が具体的な音となって響きます。

■Jackie McLean / Let Freedom Ring (Blue Note, 1963)

エンターテイメント音楽であったジャズは、1960年代に入って音楽的な探求と進化が加速、モード・ジャズやフリー・ジャズを生み出して先鋭化しました。この波にのまれたのはハード・バップの名門ブルーノートですら例外ではなく、カタログは一気にニュー・ジャズ色を強めました。このレコードは、マクリーンにとって新しいジャズの入り口になったセッションの記録で、ドラマーにオーネット・コールマンのグループにいたビリー・ヒギンスが起用されました。

巷で言われているほどフリー・ジャズ色は強くなく、前半は短調にバド・パウエルのバラードと至ってオーソドックス。挑戦が起きるのはサイドB収録の2曲で、1曲はアルバート・アイラーやオーネット・コールマンに繋がる「線」から創る音楽、もう1曲はモードを含むふたつの調を往復する、極めてニュー・ジャズ的なアイデアに富んだ音楽です。

■Jackie McLean / One Step Beyond (Blue Note, 1964)

ポスト・バップ/ニュー・ジャズ方面に進んだジャッキー・マクリーンのレコードの中で、『Let Freedom Ring』と並んで高い評価を受けているアルバムです。『Let Freedom Ring』がポスト・バップ、フリー、モードを満遍なく奏でたのに対し、このレコードはバップ色もフリー色も消し、モードを含む新主流派方面へのサウンドに徹底しました。この独特かつ新しいサウンドの鍵となったのは、モードを意識した作曲もさることながら、その独特のサウンドを持続させたボビー・ハッチャーソンのヴィブラフォンではないでしょうか。なおこの路線は、アルバム『Action Action Action』にも引き継がれます。

■Jackie Mclean / ‘Bout Soul (Blue Note, 1969)

ジョン・コルトレーンが他界した67年に録音されたレコードです。冒頭は、詩の朗読に絡めて様々なスタイルのジャズが演奏され、以降は(あくまで私の解釈ですが)ジャッキー・マクリーンが思うところの「‘Bout Soul」が圧倒的な熱量で演奏されます。

ジョン・コルトレーンの死はジャズの死でもあったという言説があり、それはある意味で当たっているのかも知れませんが、以降にこういう音楽を生み出し、スタイルの面でも理念の面でもジャズと他のアメリカ音楽が弁証法的に還元・融合したという意味では、それは次の音楽を生み出しもしたと言えます。そのジャッキー・マクリーンなりの解答が、このアルバムだったのではないでしょうか。

■レコード高価買取に関するあれこれ

超がつくジャズのプレミア・アルバムとしても名高いのが、デビュー・レコード『Presenting… Jackie McLean』です。このレコードをリリースしたAd Lib というレーベルは、恐らく2タイトルしかレコードを発売しなかった個人レーベルと思われます。さらに、まだ有名になる前の新人のレコードという事もあり、プレス数が少なかったのでしょう、55年のオリジナル盤は数十万の値をつける事もある超レア盤です。以降はレーベルをJubilee に移し、タイトルを『The Jackie McLean Quintet』に改めてリイシューされましたが、紫をイメージカラーにした猫の影絵ジャケットは差し替えとなってしまいました。紫ジャケットが初めてレコードで復刻されたのは91年の事で、この素晴らしい仕事をしたのは日本でした。この日本盤も、今ではなかなかの値をつけています。

それ以外のレコードでは、ジャッキー・マクリーンの長いキャリアの中で、ブルーノートに残したアルバムのオリジナル盤は間違いなくプレミアです。オリジナル盤でなくとも高額をつける事もあり、例えば78年の日本リイシュー『One Step Beyond』などは海外でも高く評価されており、高額をつけることがあります。

もし、ジャッキー・マクリーンのレコードを手放そうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。思わぬ高額買取りレコードになるかもしれません。

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お楽しみ~