1980年代のアメリカのアンダーグラウンド・シーンで、サウンドやビート、また詞において激しさを持つ音楽が生まれました。パンクからニューウェーヴへと進んだ過程で起きたある種のぬるさやスノッブさが避けられ、「エンジン」と呼ばれるドラムを中心に極端なほどにビートを重視。また「バズソー」と呼ばれたノイズに近い音を発するギターがリフやパワーコードを叩きつけていくその音楽は、ハードコア(またはハードコア・パンク)と呼ばれるようになりました。

レーガン大統領時代のレーガノミクスによって進んだ格差社会への反抗からか、露骨な政治批判を含んだその詞は左翼色を強めて名指しで政治家や政党を批判するまでにエスカレート。その姿勢は同じく保守政党に抑え込まれ格差の広がっていたイギリスにも飛び火、さらに世界へと広がり、以降に生まれたハードなロックは、メタルであれグランジであれ、いずれもハードコアの影響を何かしらの面で受ける事になりました。音楽的な進歩と徹底した政治姿勢から、ハードコア・パンクこそがパンク・ロックの完成形と言われる事すらあります。

今回は、そんなハードコアのうち、初期の名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■Minor Threat / Out Of Step (Dischord Records, 1981)

ハードコアという音楽が合衆国のアンダーグラウンド・シーンから登場した音楽である事から、その出自には諸説があります。そのひとつである、ワシントンDC で活動していたマイナー・スレットこそがハードコア最初のバンドという説は、このレコードを聴くとたしかに説得力があるものです。従来のパンク・ロックにはない極度に速いテンポ、瞬間のうちに駆け抜けていく短い曲、ノイジーなサウンドなど、ハードコアどころか以降のロック全体にも多大な影響を与えた「ハードコア的な何か」が、ここに明確に確立されています。

■Black Flag / Damaged (Unicorn / SST, 1981)

アメリカの初期ハードコアの代表的なバンドが、ブラック・フラッグです。このレコードはデビュー・アルバムで、ハードコアの代表的な名盤のひとつと言えるでしょう。

マイナー・スレットの音楽にはハードコアに必要な要素のほとんどが揃っていたように思えますが、ひとつだけ足りていなかったのがメタルの要素。それが加わったのがブラック・フラッグの大きな進歩でした。のちのハードコアの決定的なカラーとなる極度にノイジーなギター・サウンド、断片化されたリフ、従来のパンク・ロックではまず聴く事のできなかったテクニカルなアドリブなど、パンク系の音楽におけるギターの大きな進歩は、ブラック・フラッグによってなされました。このギターを弾いたのはグレッグ・ギン、彼こそが「バズソー・サウンド」と呼ばれたハードコアのギターの様式を決定的なものにした人物と言えるかもしれません。

■Discharge / Hear Nothing See Nothing Say Nothing (Clay, 1982)

初期ハードコアのアメリカ代表がブラック・フラッグなら、もうひとつの震源となったイギリスを代表するバンドがディスチャージです。マイナー・スレット、ブラック・フラッグ、また今回は取りあげませんでしたがデッド・ケネディーズといったアメリカのハードコア・バンドが、どこかにロックンロール的な色を残していたのに対し、イギリスのハードコアはヘヴィメタル的とも言えます。これは、モーターヘッドの影響があるのかも知れません。デスヴォイス一歩手前の声で叫ぶヴォーカル、ドラムとベースで創るハードコア特有の高速でハードなリズム・セクションなど、他ジャンルから独立したハードコアらしい音楽を創り出したのが、ディスチャージでした。私がハードコア最高傑作を挙げるとすれば、このアルバムか、同じくディスチャージ『Grave New World』を選びます。

■G.B.H. / City Baby Attacked By Rats (Clay, 1982)

G.B.H. も初期のUKハードコアを代表するバンドです。ディスチャージが初期ハードコアを濾過しきった形の音楽とするなら、G.B.H. はロンドン・パンクなどとのつながりを感じさせます。メロディは残り、従来のパンク・ロックの様式ともいえるユニゾンでのコーラスも入ります。それでいながらビートやノイズ感は間違いなくハードコアです。

ちなみに、ディスチャージとG.B.H. にエクスプロイテッドを加えた3つのバンドは、「UKハードコア・パンク御三家」と呼ばれています。

■レコード高価買取に関するあれこれ

初期ハードコア自体が、アンダーグラウンドから出てきて成立した音楽であっただけに、そのレコードもインディーズ・レーベルからリリースされたものがほとんどで、現在ではプレミアとなっているものが非常に多いです。

『Minor Threat / Out Of Step』は、再プレスされるたびにジャケットの色を変え、最終的には赤、黄、緑、青の4種のジャケットが生まれました。このうち初回プレスは赤で、現在では20万円を超す超のつくプレミアとなっています。なお、他の色もすべてプレミアで、5万や10万を超える事も珍しくありません。また、本作に限らず、解散までにマイナー・スレットが発表したレコードは、そのほとんどがプレミア状態と言える状況です。

『Black Flag / Damaged』は、81年のUSオリジナル盤だけでなく、82年USリイシュー盤もプレミア化しています。5000円超えは安い方で、1万円以上が当然の状態です。

『Discharge / Hear Nothing See Nothing Say Nothing』をリリースしたクレイは、英ハードコアの重要インディーズ・レーベルで、先述のG.B.H. もこのレーベルからレコードをリリースしました。インディーズだけにやはり需要に対して供給が追い付いていない状態で、82年UKオリジナルはプレミアです。このレコードは83年に日本でもバップからリリースされましたが、これも評価が高く、帯つきは高額になる事が多いです。

もし、ハードコアのレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。思わぬ高額買取りレコードになるかもしれません。

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編集部でもファンが多い初期ハードコア、ジャパニーズハードコア系の買取に強いと定評がある、おすすめの関西(大阪、神戸兵庫、京都、奈良、和歌山、三重)のレコード高価買取店を紹介しておりますので、売却や買取を考えている方はぜひ参考にされてはいかがだろうか。ディスチャージをかけながら、、、やっぱ名盤だ。それでは、また次回の記事でお会いしましょう。