60年代末から70年代初頭という日本のロック黎明期は、現在の日本では考えられないほどの個性や創造力、そして過剰なエネルギーに満ちたいくつもの優れたバンドを生み出した時代でもありました。外道は間違いなくそのひとつで、キャロルと並んで暴走族のカリスマという音楽外での社会性も持ったバンドでした。

アメリカに尻尾を振り始めた当時の日本で、歌舞伎者を想起させるファッションを纏い、みずからを「外道」と名乗り、扇情的であるばかりでなく斜に構えたある種のニヒルさ・軽妙さを持つそのふるまいは、たしかにカリスマ的なものでした。

しかし外道はそれだけではなく、音楽面でも優れたバンドでした。他の追随を許さない爆発力もテクニックも、以降の日本のロック全体を見渡しても上位に入る強力なロック・バンドと思います。

今回は、外道の名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■外道 (Showboat, 1974)

デビュー・アルバムにして外道最高傑作の評価も集めるレコードです。外道はパンク・ロックと言われる事のあるバンドですが、それはいでたち・詩・暴走族などからのリスペクト・MCなどから伝わってくる社会姿勢から見た定義であって、音楽的にはハードロックと言った方が伝わりやすいかも知れません。そのスピード感と分厚いサウンドはスリーピース・バンドとは思えないほどに強力。ロックンロール・ナンバー「ロックンロールバカ?」、ドクター・フィールグッド級のリズムのキレを見せる「ビュンビュン」、サイケデリック感覚に満ちた「ダンス・ダンス・ダンス」などを聴けば、どれだけの力量を持ったバンドか分かります。

しかし、外道の凄みはそういう技術面におさまらない部分にあったのではないかと思います。このレコードの冒頭に炸裂するナンバー「香り」の暴力的ともいえるほどのギターの歪み、「完了」での暴発した演奏などは、安全圏をはるかに超えたロック的なエネルギーに満ちており、ガレージ・ロックにも通じるこの過剰さが、外道を日本のロックで特別な存在にしたと言えるのではないでしょうか。

■拾得LIVE (Showboat, 1975)

京都の有名ライブ・ハウスである拾得でのパフォーマンスです。伝説のファースト・レコードの翌年発表という事もあり、収録曲には重複するものもありますが、『外道』未収録の「宇宙からの叫び」のテクニカルでありつつ躍動するギターリフの演奏など、このレコードでしか聴けない素晴らしさも満載。外道の加納秀人をフェイバリットにあげる日本人ギタリストは多いですが、それもうなずける演奏です。

外道のレコードはライブ録音が多いですが、70年代のJロック黎明期を支えたもののひとつにライブ・ハウス文化がありました。東京では新宿ロフトや曼荼羅、京都では拾得や磔磔は非常に有名です。Jロック黎明期の拾得には、京都出身のロック・バンドとして有名な村八分や、同じく関西圏出身のヘルプフル・ソウル(ルパン三世テレビ第1シリーズで有名なチャーリー・コーセイが在籍したバンド)などが出演していたそうです。こうした地域有数のハコに出演し、受け入れられて、はじめて全国区のバンドとして認められるという文化がありました。

ライブの空気感をみごとに閉じ込めたこのレコードには、随所にMCが入ります。ロック・バンドらしからぬ外連味のない「どうもどうも」などというトークは、完成させたものを一方的に見せるのではなく、パフォーマーと聴衆がやり取りしながらライブが成立していく様がよく分かり、70年代のライブ・ハウス文化を感じさせるものでした。しかし外連味がなさ過ぎて、「男じゃなくても立ってください」などの発言もいろいろ飛び出すため、MC中のピー音の数がすごい事になっていますが…。

■レコード高価買取に関するあれこれ

後年になって海外でも高く評価された事もあり、黎明期の日本のロックは、それだけでもプレミアがつきやすいジャンルです。売れ線に走らず、音楽自体も強力だった外道のレコードが後年になって評価を受けるのは当然とも言えますが、意外にプレミアと言えるほどの状態になっていないものが多いです。

デビュー・レコード『外道』は、74年リリース盤はボール紙にスタンプを押しただけという、アンダーグラウンド感満載の装丁、レーベルには大きな筆文字で「外道」と書かれています。再発盤はレーベルであるShowboatのロゴが入ったピンクのラベルで、こちらには帯がついています。 どちらの人気が高いかは難しい所ですが、目にする機会が少ないのは再発盤の帯つきでしょうか。

『京都拾得LIVE』は、かつては名盤としてその名を馳せたレコードでしたが、意外にもそれほどプレミア化していません。理由のひとつは、後年になって『京都拾得 完全版』というCDがリリースされたためでしょう。むしろ、このCDの方が高額化している状況です。

このレコードに限らず、外道のライブ発掘音源は少なくありません。『外道』『拾得LIVE』というライブ録音での強烈なパフォーマンスが記録されているだけに、それを求めるファンも多いのでしょう。外道は76年に一度解散しましたが、日比谷野音での解散コンサートも後年になって音盤化されました。

もし、外道のレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。思わぬ高額買取りをしてくれるかもしれません。