ブリティッシュ・インヴェイジョンの一角をなすヤードバーズに参加して名をあげ、同バンドに参加したエリック・クラプトン、ジミー・ペイジと合わせて「3大ロック・ギタリスト」とも呼ばれるのがジェフ・ベックです。ブルース志向の強いエリック・クラプトン、楽曲を構成する総合的なギターを得意とするジミー・ペイジに対し、ジェフ・ベックは典型的なリード・ギタリストであり、独創力に富むそのプレイは、似た演奏をするプレイヤーを探す事すら難しいほどです。60年代デビューながら、21世紀に入ってからもドラムンベースを取り込んだアルバムを発表するなど、長期に渡ってロックの最前線に立ったその精気みなぎる活動も素晴らしいものでした。

今回はジェフ・ベックの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■Jeff Beck / Beck-Ola (EMI Columbia, 1969)

ヤードバーズを脱退したジェフ・ベックは、ヴォーカリストのロッド・スチュワートらとともにバンドを結成します。このバンドは俗に「第1期ジェフ・ベック・グループ」と呼ばれ、『Truth』『Beck-Ola』という2枚のアルバムを残しました。

どちらもブルース・ロックに近い音楽ですが、『Beck-Ola』はキーボードを正式メンバーに入れた事で、ジェフ・ベックがバッキングをせずリードギターに専念でき、より縦横無尽に暴れられるようになりました。この個性の塊のようなギターゆえに、普通のブルース・ロックの枠に収まらないバンド・ミュージックが生まれたともいえそうです。

■Jeff Beck Group / Rough and Ready (Epic, 1971)

メンバーを総入れ替え、コージー・パウエルらを入れた71-72年のバンドは、俗に「第2期ジェフ・ベック・グループ」と呼ばれます。ロックやポップスには無かった独特の転調を含んだニュー・ソウル系の音楽に近づき、もしジェフ・ベックがヴォーカル・ミュージックに拘ったのであれば、これがパーマネントであったとしてもおかしくないレベルの高いバンドでもありました。

これがニュー・ソウルの焼き直しに聴こえないのは、やはりジェフ・ベックのギターの個性ではないでしょうか。聴きようによってはメンバーの中でもっとも音楽のレベルが弾くにのはジェフ・ベックかもしれないバンドですが、しかしこのロック的な粗暴さや鋭さを生み出したのもやはりジェフ・ベックだったと言えそうです。

■Jeff Beck with the Jan Hammer Group / Live (Epic, 1977)

第2期ジェフ・ベック・グループが空中分解、かつてより意中であったヴァニラ・ファッジのメンバーとようやく結成に至ったベック・ボカート&アピスというトリオ編成のバンドも長続きせず、ジェフ・ベックはフュージョン色の強いインスト路線へと踏み込みます。ジェフ・ベックといえばまずはこのフュージョン期の音楽で、75年から80年までに残された4枚のアルバムは、いずれもロックの歴史に残る素晴らしい完成度です。

キーマンは、マハヴィシュヌ・オーケストラ出身のキーボード/作編曲のヤン・ハマー。極端な言い方をすれば、ヤン・ハマーらフュージョン系のミュージシャンが生み出した音楽の上でジェフ・ベックが暴れるのがこの時期のジェフ・ベックの音楽のスタイルで、ヤン・ハマー・グループにジェフ・ベックが参加したライブである本作はそれを雄弁に物語っています。

フュージョン期ジェフ・ベックを代表する超がつくほどの技巧曲「スキャッターブレイン」のライブ演奏など、このレコードなしにロック側から見たフュージョンを語る事などできないでしょう。

■Jeff Beck / There And Back (Epic, 1980)

フュージョン期ジェフ・ベックのライブ代表作が『Live』なら、スタジオ・アルバムの代表作は4作品の最後を飾る本作ではないでしょうか。フュージョン期4作といっても、初作『Blow by Blow』ではまだブルース・ロックから抜けきっていないと感じるギターのアプローチも目立ちましたが、本作となると、作曲も演奏も、このスタイルを洗練しきっています。フォービート・ジャズでもロックでも成立しえなかったフュージョン的なタイトかつテクニカルなリズム・フィギュアも、ジェフ・ベックのギターがどれだけ暴れようが楽曲をタイトにまとめ、傑作の名にふさわしい音楽を完成させています。

■Jeff Beck / Who Else! (Epic, 1999)

企画ものを除けば14年ぶりとなったジェフ・ベックのリーダー・アルバムです。フュージョン期がヤン・ハマーとの共作であったとすれば、本作は作曲やバックトラックを作り上げたトニー・ハイマスとの共作で、暴力的なテクノ・ロックとでも呼びたくなるような新しい音楽が生まれていました。プログラミングを駆使したバックトラックを使いながら音楽が軟弱にならない様は、ニュージャズ方面の巨星サム・リヴァースらとも共演していたトニー・ハイマスの音楽性の高さと、やはりインパクトにかけては比肩するものすらいないジェフ・ベックのギターにあるのではないでしょうか。

■レコード高価買取に関するあれこれ

レコードの価格的な価値はおもしろいもので、音楽が素晴らしければ値段があがるかというと、そうでもありません。ジェフ・ベック関連のレコードの場合、最盛期といえるフュージョン時代より、第1期ジェフ・ベック・グループの方がレコードの価格自体は高額化している状態です。

第1期ジェフ・ベック・グループの2枚のアルバム『Truth』『Beck-Ola』は、UK盤がColumbia、US盤がEpic表記となり、どちらもモノとステレオの2種があります。年代がたっている事、そしてフュージョン期ほどの爆発的なセールスには至らずに数が多くない事もあるのでしょうが、いずれもリリース当時のものは、状態さえ良ければ1万円超え必至のプレミアとなっています。

もし、ジェフ・ベックのレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。