1960年代後半にチャールズ・ロイドの大ヒットアルバム『Forest Flower』に参加して注目を浴び、70年にマイルス・デイヴィスのエレクトリック・バンドにチック・コリアとともにツイン・キーボードとして参加。以降はジャズの歴史の中でも特異な即興によるピアノ独奏、スタンダード・ナンバーを手掛けるピアノ・トリオ、アメリカとヨーロッパのふたつのカルテット、そしてジャズから離れたクラシック録音など、グループごとに音楽を弾き分けたピアニストがキース・ジャレットです。清廉としたそのサウンドは、一世を風靡したドイツの音楽レーベルECM のサウンドとも実にマッチしたもので、ECM の看板スターのひとりでもありました。

今回はキース・ジャレットの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■Keith Jarrett / Death and the Flower (Impulse!, 1975)

キース・ジャレットはメンバーの違うふたつのカルテットを作りましたが、デューイ・レッドマン、チャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンといったフリージャズ寄りのアメリカ人ミュージシャンを擁したバンドは、通称アメリカン・カルテットと呼ばれています。これはアメリカン・カルテットを代表するアルバムであると同時に、エレクトリック・マイルス・バンド脱退後のキース・ジャレットの名声を決定づけたレコードでもありました。

西アフリカの民族音楽と聞き間違えるほどにプリミティブにスタートするアルバム冒頭は、フリージャズ全盛期を生き抜いたサイドマンたちの独壇場。それが、キース・ジャレットが入るやいなや、フュージョン寄りのモード・ジャズへと色を変えるさまは、まるでジャズが表現の時代から次の時代に入ったことを象徴したかのような響きでした。

■Keith Jarrett / The Köln Concert (ECM, 1975)

70年代のキース・ジャレットの大ブレイクは、長時間にわたる即興性の強いピアノ独奏によるところも大きかったです。日本公演を収めた『サンベア・コンサート』に至っては、ピアノの即興演奏でレコード10枚組というボリュームでした。そんなキース・ジャレットのピアノ即興演奏の代表作のひとつであり、レコード2枚組という比較的聴きやすいアルバムが、75年1月のケルン公演を収めたこのアルバムです。

曲の導入部やイメージぐらいはあらかじめ決めてあったのかも知れませんが、おおむね即興演奏。しかし無調のフリーには走らず、明確にトーナル・センターとリズムを感じるものがほとんどで、意外なほどに難解さのない聴きやすい音楽です。また、アート・ブレイキー、チャールズ・ロイド、マイルス・デイヴィスというバンドに参加してきたピアニストとは思えないほどジャズ色が希薄な即興でもあり、これがECMのヨーロッパ的なイメージに実に合っているようにも感じます。70年代のECM、そしてロックやクラシックともクロスオーバーしていく70年代ジャズの潮流を強く感じる音楽とも感じます。

■Keith Jarrett / My Song (ECM, 1978)

アメリカン・カルテットに対し、ヤン・ガルバレク以下サイドマンすべてがノルウェー出身であるカルテットは、ヨーロピアン・カルテットと呼ばれました。このレコードはヨーロピアン・カルテットによるスタジオ・アルバム第2作で、このカルテット最大のヒット作になりました。

演奏は、その音色と相まってまさに北欧とでもいうべきクールさ、しかし曲はポップスと言ってよいほどに親しみやすい曲が並びます。飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を得ていったECMは、70年代にこうした「演奏が非常にうまいインストのポップス」と呼べてしまいそうなフュージョン色の強いアルバムを数多くリリースしましたが、こうしたイメージの一端を担ったのは、間違いなくキース・ジャレットだったように思います。

■Keith Jarrett / Creation (ECM, 2015)

2014年、キース・ジャレットが行った最後の世界ツアーから抜粋されたライブ・アルバムです。録音場所はパリ、ローマ、東京、トロントに跨っていますが、それを感じさせないほどの統一感を感じさせます。

音楽は、バッハ、キース・ジャレット的な即興、そしてジャズまでを感じさせる集大成的な内容で、はじめて聴いた時には圧倒されました。バンドごとに違う音楽を演奏するキース・ジャレットは、見ようによっては自分が強く主張する音楽のない器用貧乏なミュージシャンにも思えましたが、最後の世界ツアーでようやくそれが統合されたのではないかと思わされました。キース・ジャレットはクラシック・ピアノの習得からキャリアをスタートしており、高校に入ってからジャズに関心を深め、バークレー音大へと進んだキャリアを持っています。そんなピアニストが自分をふり返って創り上げた集大成的なパフォーマンスだったのではないでしょうか。

■レコード高価買取に関するあれこれ

キース・ジャレットはIMPULSEやECM と契約する前に、Atlantic やVortex(これはアトランティック内レーベルです)から何枚かのレコードをリリースしていました。これらのレコードの中には、日本ではなかなか見つけにくい希少価値のあるものもあります。その点で高額をつける事がありますが、しかし人気面から安く入手できることもあり、相場が安定していません。

人気があるのはやはりECM時代のアルバムで、CDは価格が下がっているもののLPレコードは高額となる作品がそれなりにあります。

もし、キース・ジャレットのレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。