メタル・ゴッドの異名を取り、79年以降現在まで続くヘヴィメタルのルーツのひとつとなったバンドがジューダス・プリーストです。レコード・デビューは74年と古参、すでに優れたハードロック・バンドではありましたが、79年に起こったニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル(NWOBHM)の潮流に乗って音楽性を変化させ、アイアン・メイデンと並ぶブリティッシュ・ヘヴィメタルの重鎮バンドとなっていきました。

今回は、1980年発表、ブリティッシュ・ヘヴィメタル黎明期に生まれた大名盤「ブリティッシュ・スティール』を取り上げさせていただきます。

■80年代以降に隆盛を極めたヘヴィメタルの大きなルーツ

あくまで個人的見解ですが、このレコードからが、いよいよヘヴィメタルの重鎮バンドとしてのジューダス・プリーストのスタートと感じます。ジューダス・プリーストはそれ以前にも78年『ステンドグラス』などの名作を発表してはいますが、ヘヴィメタルというよりもハードロック。

では、ジューダス・プリーストにおけるハードロックとヘヴィメタルの差はどこに生まれたのでしょうか。本作収録「Rapid Fire」のギターでパワーコードによる速いカッティングは、のちのスラッシュ・メタルを特徴づけるバッキングの典型となりました。また、ギター・ソロも、『ステンドグラス』時にはジミ・ヘンドリックス的ともいえるブルースロックの名残が見えましたが、本作ではその色は完全に排除、タッピングを含めた高速プレイに移行しています。つまり、ハードロックから泥臭いものをすべて捨て、エッジのたつハードでスピーディーなものへと音楽の方向を絞り切った所でヘヴィメタルという強い認識が生まれたのではないでしょうか。剃刀の刃が指に食い込むジャケット・デザインは、このアルバムの鋭い音楽性を的確に表しているように感じます。

■レコード高価買取に関するあれこれ

ブリティッシュ・ヘヴィメタルの古典的名盤として知られるこのレコード、実はUK盤とUS盤で曲順が違います。これに合わせて各国盤の曲順が変わってきて、カナダ・南米・アフリカなどはUS盤準拠、スペインやギリシャはUK盤準拠です。しかし面白い事にヨーロッパがUK準拠というわけでもなく、ヨーロッパ盤やギリシャ盤はUS準拠だったりします。ちなみに日本はUS準拠でしたが、2001年時のリマスターを境にUK盤に従う形となりました。ジャケットに目立つ差がないもので両者の見分けは難しいですが、「Rapid Fire」1曲目がUK、「Breaking The Law」1曲目がUSです。

リイシュー盤には注目のレコードが2つあります。ひとつは、古いメタル・ミュージックの復刻を行っている「Back on steel」レーベルが2013年にリイシューしたレコードで、盤面がグレー、中央より放射状の線がデザインされている、通称「グレー・スプラッター」盤です。これはすでに5000円超の値段になっています。

もうひとつは、2020年にヨーロッパ・プレスでリイシューされた3500セット限定2枚組ピクチャーディスクです。片面プレスによる2枚組で、ボーナス・トラック2曲収録、ピクチャーディスクが透けて見えるクリアのゲートフォールド(見開き)ジャケットです。これはすでにプレミアの気配がありますが、今後ますます高額化していくのではないかと思います。

もし、ジューダス・プリーストのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。