15歳の頃から一流のミュージシャンに重用されたジャズ・ヴォーカリストのビリー・ホリデイは、デッカ、マーキュリー、コロムビア、MGMという錚々たるレーベルから数多くのレコードを発表しました。しかし麻薬禍などもあって、発表されたレコードは彼女のコンディションが良いものばかりではありません。そんなビリー・ホリデイと最も長い期間専属契約を結んだのがノーマン・グランツ。彼は自分が持つClef やVerve というレーベルから、ビリーのレコードを数多く発表しました。そんなノーマン・グランツ傘下のレーベルが発表したビリー・ホリデイのレコードで特に高く評価されているのが、日本ではJATPの略称で知られるコンサート録音です。

今回は、ビリー・ホリデイ最高傑作のほまれ高いレコード『Billie Holiday / At Jazz At The Philharmonic』(邦題「ビリー・ホリデイの魂」)を取り上げさせていただきます。

■ボディ・アンド・ソウルほか、名唱が並ぶ傑作ライヴ

自叙伝の邦訳、弱小レーベルからリリースした10インチ盤の完全版リリースなど、戦後日本でのビリー・ホリデイ人気は相当なものでした。それだけ人気のあったビリー・ホリデイの録音のうち、日本でのヴァーブ系レーベルのリリース第一弾に選ばれたのがこのレコードでした。

「ボディ・アンド・ソウル」は生涯一かもしれない名唱、「奇妙な果実」はピアノ伴奏のみで歌われ、「オール・オブ・ミー」もミルドレッド・ベイリー以上にこの曲に合った歌唱にすら思えてくるほどでした。

また、クレジットはされていませんが、『ビリー・ホリデイ・ディスコグラフィ』によると、このライヴにはコールマン・ホーキンスも参加していたといわれています。ビリーとコールマンはステージが終わった後も何件も一緒にナイトクラブを回っていたといわれる昵懇の仲。コールマンの葬儀では、ビリーは未亡人から歌唱を断られたそうです。

■レコード高価買取に関するあれこれ

当初このレコードは10インチ盤としてリリースされ、USオリジナルは以降とうとう再発される事はありませんでした。しかし名演である事は伝わるもので、US盤は1万円越えは当然、4万円超絵もある状態となっています。US盤ほどではないものの、UK盤(これも再発はなし)もやはり高額化しています。

これを12インチLP化したのは日本で、何度も再発されました。日本盤の特徴は、A面に10インチ盤全曲を収録、B面にクレフ/ヴァーヴ期の録音から名演をセレクトした形となっています。この時代のレコードは数が多いものの入手困難であるため、これも人気があり、4000円超えが普通、帯やライナーつきとなると海外では相当な値段になる事があります。

もし、ビリー・ホリデイのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。