1960年代のイギリスで起きたブルースロックの大ブーム。初期はローリング・ストーンズやアニマルズのようなR&B調のバンドが目立ちましたが、60年代後半に入ると音楽の幅も力もあるミュージシャンが次々に登場するようになりました。その中のひとりが、ジョン・メイオールです。
「ブリティッシュ・ブルースの父」アレクシス・コーナーの後押しもあってレコードデビューしていた彼でしたが、いよいよ注目を集める事になったのは、エリック・クラプトンとの共演によってでした。エリック・クラプトンもまた、ジョン・メイオールとの共演によって、ギタリストとしての知名度を轟かせることになります。
今回は、この両者が共演した66年発表の名作『John Mayall with Eric Clapton / Blues Breakers』(邦題:『ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』)を取り上げさせていただきます。
■曲ではなく演奏表現…ロックの新たな局面
ビートルズの登場によってアメリカに並ぶロック/ポップス大国になったイギリスですが、それは1曲2~3分で演奏するチャート音楽の域を超えるものではありませんでした。ブルースロックは、その状況が変わる大きなきっかけとなります。
アフリカン・アメリカンの音楽であるブルースは、フォークロアと産業音楽の中間にあって、プレイヤーによる表現がしやすい音楽です。アコースティック・ギター弾き語りを除けばシンプルな技法に基づいた音楽なので、それほど高いメソッドを必要とせずに、長いアドリブ演奏が可能となります。それは演奏による表現の幅を広げる事にもつながります。ここでロックは、曲重視だけでなく、演奏重視な音楽となる事も可能になったのではないでしょうか。
楽器がうまいポップスやロックのプレイヤーはいましたが、楽器表現に優れるプレイヤーの登場は、ブルースロックから。その最初期の例が、このレコードでのエリック・クラプトンの演奏です。このレコードでのクラプトンは、ヤードバーズ在籍時とは比較にならないほど、縦横無尽にギターを演奏しています。アンプによるナチュラルドライブしたサウンドとあわせ、スタイルこそブルースですが匂いはロック。ここからロックは次のレベルに突入する事になります。
■ブルースのレイドバック感がもたらしたもの
一方のジョン・メイオールは、50年代以降の白人のチャート音楽にはない美感をロックに持ち込みました。ローリング・ストーンズにしてもアニマルズにしても、ブルースロック初期のバンドは、ブルース以上にR&B的というか、ビートの強い白人チャート音楽の流れを汲んだバンドでした。ジョン・メイオールも、デビュー・レコードではやはりクラブ色の強い音楽を演奏しています。
しかし本作のジョン・メイオールは、戦前ブルースが持っていたブルーなレイドバック感をロックに持ち込みました。私がこのアルバムに感動するのは、クラプトン以上にジョン・メイオールのピアノとハーモニカでした。「Double Crossing Time」でのスペースを広く取ったホンキートンクなピアノ、「Another Man」でのリトル・ウォルターばりの表現力で奏でられるブルースハープ。これも楽曲以上に表現に寄ったものですが、その演奏によって表現されたサウンドは、それまでの白人チャート音楽にはありえないものでした。
両者の共演は、楽曲ではなく演奏表現への踏み込みや、新しい美感をロックに持ち込んだものだったのではないでしょうか。まさにロック全盛期へのマイルストーン、今なお魅力を放ち続けるロックの名盤のひとつだと思います。
■レコード高価買取に関するあれこれ
なんといってもロックの古典的大名盤ですので、DECCAレーベルのオリジナルUK盤は数万円の値がついて当たり前の状態です。また、LONDONレーベルとなる66年US盤も人気が高く、これも間違いなくプレミア。日本盤初登場は69年ですが、69年盤はフォントなど細かいデザイン変更があり、UK盤やUS盤ほどではないにせよ中々の人気ぶりです。
もし、ジョン・メイオールのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。