1977年、イタリアで『サスペリア』というホラー/オカルト映画が制作され、瞬く間に世界中で人気を博しました。監督はダリオ・アルジェント、ストーリー以上に映像や音楽をフルに活用して展開していく斬新な手法は、思考を排して直接感情に訴えてくる強烈さがあり、鮮烈な色彩を持つ映像に見事リンクしたサウンド・トラックも爆発的にヒットしました。作曲と演奏はゴブリン、知られざるイタリアのプログレッシヴ・ロック・バンドでした。
今回は、レコード『サスペリア』を取り上げさせていただきます。
■映像と音楽の融合
ホラー映画史に残る大傑作『サスペリア』ですが、私にとって、その魅力の半分は音楽です。音楽だけでここまでの恐怖を感じたことがないもので、それは戦慄の体験でした。
この音楽は映画を前提に色々なアレンジが施されているように感じますし、実際に映画では「Music by the “GOBLINS” with the collaboration of Dario Argento」とクレジットされています。
テーマ曲では、音楽のうしろに、編曲とSEの中間ほどの位置づけにある喘ぎ声が入っています。これは魔女のささやきを想定し、不気味さを醸し出す効果を狙った演出でしょう。「魔女」と題された曲では、ティンパニのヘッドがゆるくチューニングされて異様な迫力を持つサウンドを生み出しています。恐らくこういう部分が「アルジェントとのコラボレーション」という部分なのでしょう。
こうした具体的なサウンドだけでなく、楽器や楽曲にも映像との同庁が伺われます。チェレスタをはじめ、古楽を想起させる楽器やメロディが使われるのも、ヨーロッパに巣食う古めかしい魔女を表現するためでしょう。音楽としての『サスペリア』は、映像と融合した内容を持っており、これが恐怖音楽という独特の音楽のあり方を生み出したのではないでしょうか。
■レコード高価買取に関するあれこれ
映画のヒットとともに、サントラ盤でもあるこのレコードも世界中で発売、ヒットしました。レコードというものは他に比べて本国オリジナル盤が高額化する事が多いですが、面白い事に『サスペリア』は各国盤の中に、オリジナルと同等またはそれ以上に高額化するものがあります。
イタリア製オリジナル盤はゲートフォールド仕様、足が血に染まったバレリーナのエンブレムがあしらわれたジャケットで、おおむね4000円以上の値がつくのが相場のようです。
77年UK盤と同UK/ヨーロッパ仕様盤は、ヴァイオリンを弾く赤いガーゴイル(翼をもつ悪魔的なデザインの怪物で、映画にも神殿や魔女の巣窟である学校の雨どいのデザインとして登場します)のイラストがあしらわれたもので、安くても5000円、状態の良いものとなると2万円を超す高値を付ける事があります。
日本盤は、UKジャケットをベースに、異様な色彩効果が特徴である映画を象徴するかのように、女学生サラが殺害される前の緑に浮かび上がったシーンが中央にレイアウトされています。これも4000円以上が普通で、7000円を超える事も普通にあります。なお、日本盤は4ページフルカラーのレコード袋が装備されているのですが、これがポップアップ状(いわゆる飛び出す絵本)の仕掛けがしてあり、これが人気の理由なのか、海外での人気が高く、1万円を超えるのが普通となっています。
もし、ゴブリンや『サスペリア』のレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。