バッファロー・スプリングフィールドのスティーヴン・スティルスとニール・ヤング、バーズのデヴィッド・クロスビー、ホリーズのグラハム・ナッシュという、フォーク/カントリー系ロックの大物ミュージシャンによって結成されたスーパー・グループがクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(以下CSN&Y)です。見事なコーラス・ワーク、アコースティック・ギターをベースにしたフォーク/カントリー色の強さ、そしてそれを発展させた進歩的な音楽性で一時代を築きあげました。
今回は、1970年発表の彼らの最高傑作アルバム『デジャ・ヴ』を取りあげさせていただきます。
■カントリーのお家芸をウエストコースト・ロックへと繋いだ驚異のコーラス!
カントリー・ミュージックは、ビル・モンローやカーター・ファミリーの時代から、見事なコーラスを聴かせる音楽でした。この伝統は受け継がれ、デヴィッド・クロスビーが在籍したバーズは、カントリー・ロック黎明期の名バンドであるばかりか、ロック史に残ると言ってよいほどの素晴らしいコーラスを聴かせるグループでもありました。名曲「Turn, Turn, Turn」のコーラス・ワークなどは鳥肌が立つほどの見事さです。
しかし恐るべきことに、CSN&Yはこのレコードでバーズをも凌ぐほどの見事なコーラスを聴かせます。コーラスにおいて、CSN&Yは伝統の完成度を引き上げ、以降のウエストコースト・ロックに繋いだと言えるのではないでしょうか。
ほぼすべての曲で見事なコーラス・ワークを聴く事が出来ますが、アルバムタイトル曲「デジャ・ヴ」冒頭で聴かれるコーラスが驚愕のレベルです。1拍3連の連続というひとりでさえピッチもリズムも合わせにくい高速の変化での見事なハーモニーは、これを聴くだけでも本作を手にする価値があるように思えます。
■伝統のフォーク/カントリーと進化するロックのハイブリッド
ただ、達人技だけであればCSN&Yはフォーク/カントリー・ロックの達人集団で終わったかも知れません。フォークやカントリーではありえなかった進歩的な作編曲の技術がこのアルバムで使われ、それが本作を特別なものにしたように感じます。
バッファロー・スプリングフィールドの実質的リーダーであったスティルスは、冒頭曲「Carry On」でビートもテンポも違う展開部を設け、どんな曲もアメリカン・ソングフォーム内に収める傾向があるそれまでのカントリー、フォーク、そしてロックやポップスの形式を崩します。同様の事をクロスビーは「デジャ・ヴ」で行っており、この曲に至ってはほとんど4部形式です。
一方ニール・ヤングは「Country Girl」の平歌中で同主調転調を用いるという、カントリーやフォークではありえなかった仕掛けを作ります。仮にそうした作曲技術があったとしても、複雑なコード・プログレッションに対応するアドリブ理論が浸透しきっていないフォークやカントリーでこうした作曲を行う事は好まれなかったでしょう。バッファロー・スプリングフィールドやCSN&Yの登場によって、ようやくカントリーの流れの音楽は、次のステップに踏み込むことが出来るようになったのではないでしょうか。
■レコード高価買取に関するあれこれ
ビルボード1位を獲得しただけあって、このレコードは各国で何度もリイシューされてきました。ゲートフォールド仕様にゴールドのデボス加工がされているジャケットは良質な状態を保つのが難しいようで、USオリジナル盤であっても状態によって価格にばらつきが出るようです。
また、歴史的名盤である本作は、「DEJA VU (50TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION)」というLPとCD4枚を組み合わせたボックスがリリースされました。デモやアウトテイクなどを多数収録、いずれ価格が高騰していくかもしれません。
もし、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。