グループサウンズ全盛期、 横浜を拠点に活動していたバンドが合流して出来たスーパーグループがザ・ゴールデン・カップスです。デイヴ平尾、エディ藩、ルイズルイス加部を中心に、のちにミッキー吉野や柳ジョージも参加、あとから思えばまさにオールスターバンドでした。
グループサウンズと言えばフォークの延長かビートルズやストーンズが関の山という時代に、クリーム、マウンテン、バタフィールド・ブルース・バンド、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリンといった英米でも最先端を走っていたロックを高いレベルでカバーして紹介。デビュー前のテレビ出演が評判を呼んでライブには芸能人らが数多く駆けつけ、レコード会社も争奪戦になるなど、鳴り物入りでレコードデビューを飾った実力派バンドでした。当時の日本の音楽産業界ではこうしたバンドの枠がなくGS扱いですが、あと5年遅ければ間違いなく実力派ロック・バンドとして語られたでしょう。
今回は、ザ・ゴールデン・カップスの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただこうと思います。
■ザ・ゴールデン・カップス・アルバム (Capitol, 1968)
ゴールデン・カップスが全国区でブレイクしたきっかけは、66年放送のテレビ情報番組「ヤング720」への出演だったそうです。それから約1年3か月後、満を持して発表されたアルバムがこのファースト・アルバムでした。
アルバムの構成が面白く、シングルカットされた「いとしのジザベル」は当時の日本のグループサウンズや歌謡音楽の傾向におもねった内容でした。しかしそれ以外はロックならば何でもあり。フィフティーズ調、ブルースロック、果ては最先端のアートロックまで飛び出してきます。本人たちは60年代末に一気に進化したリアルタイムの英米ロックに魅せられ、演奏衝動をもって演奏したのかも知れませんが、日本の音楽シーンから見れば、日本の聴衆がビートルズやストーンズぐらいしか聴けていなかった時代に最先端のロックを紹介した伝道師としての役割を果たしたバンドだったとも言えそうです。
■スーパー・ライヴ・セッション (Capitol, 1969)
ゴールデン・カップスは、シングル曲とライブで、音楽がまったく違うと言われます。意地悪な言い方をすれば、売るための仕事と、自分たちがやりたい事を使い分けていたと見る事も出来るでしょう。どちらの音楽が好みかは人それぞれでしょうが、演奏の白熱度やバンドアレンジの完成度で測るなら、ライブでのパフォーマンスこそゴールデン・カップスと言えそうです。実際にゴールデン・カップスにはライブ・レコードが多いのですが、そこから察するに、本人たちもそう思っていたのかも知れません。そんなライブ盤の中でも特に評価が高いのが本作です。セールス用のオリジナル曲を完全に排し、すべてロックのカバー。兄弟バンドでもあるパワーハウス参加のセッションを聴く事も出来ます。
クリーム「アイム・ソー・グラッド」をこのレベルでカバーし、サイモン&ガーファンクル「59番街」はアル・クーパーとマイク・ブルームフィールドによるアレンジを採用し、しかも彼らの上を行く熱気で演奏。これだけの演奏技術と選曲センスを持つバンドが、以降の日本にどれだけいたでしょうか。ロック不毛の地である日本では、ロックは大資本からリリースされるものはロック風歌謡曲、よりディープなものはすべてアンダーグラウンドに入ったという状況を考えると、ゴールデン・カップスやモップスが活躍した後期グループサウンズの時代が、実は数少ない日本のロック黄金期だったのかも知れません。
このレコードは欧米でも有名で、海外でも5000円超の値段がついたものを見たことがあります。日本でも状況は似ています。このレコードはCDも人気があり、レコード以上の値をつける事もあります。
■ザ・ゴールデン・カップス・リサイタル (Capitol, 1969)
ゴールデン・カップスのライブでもうひとつ推薦盤をあげるとしたら、私ならこれです。それにしても同年に2枚のライブアルバムをリリースするなんて、よほどライブバンドとしての評価が高かったのでしょうね。
『スーパー・ライヴ・セッション』が地元のライヴハウスでのパフォーマンスであったのに対し、こちらは渋谷公会堂でのコンサート。そのためかこちらはシングルとして発表された曲も演奏しています。一方で、ライブだけで演奏していた洋楽カバーはさらに演奏熱に拍車がかかっており、なんとレッド・ツェッペリンやディープ・パープルのナンバーまで白熱の演奏でカバーしていました。「ブルー・ライト・ヨコハマ」や「港町ブルース」がヒット曲だった1969年の日本では、早すぎたグループだったのでしょう。
『スーパー・ライヴ・セッション』ほどのプレミア価格でないにせよ、これもレコードは人気で、一定以上の値がつく事が多いようです。
■いかにもレコードがプレミア化しそうなグループながら、意外と作品によってばらつきがある
60年代のバンドで、しかも伝説的なグループである事を考えると、レコードはいかにもプレミア化しそうなものですが、ゴールデン・カップスの場合は事情が違うようです。スタジオ録音のアルバムは4万円超という超高値がついている事もありますが、赤盤が今の新譜以下で手に入る事もあり、実際には極端なプレミアはつかないことがあるようです。ところがライブ盤は別。どれも押しなべて人気が高く、高額化する傾向にあるようです。
もし、ザ・ゴールデン・カップスのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。