平尾昌晃らが活躍した50年代末のロカビリー、あるいは60年代中ごろのグループサウンズ。このあたりが日本のロックの嚆矢かと思いますが、本格的な実力派ロックバンドが登場するのは60年代末です。60年代末から70年代中ごろまでの日本のロックは、素晴らしいギタリストの宝庫。「外道」の加納秀人や「乱魔堂」の洪栄龍などのプレイの迫力は、以降のJロックどころか、当時全盛だった英米ロックの中に入れても上位と感じるほどの熱く素晴らしいプレイでした。

日本ロック黎明期の名ギタリストの代表格が竹田和夫であり、彼が在籍したのがブルース・クリエイション(のちにクリエイションに改名)でした。最初期はブルース・ロック、続いてハード・ロック、そしてジェフ・ベックのようなフュージョン路線と、竹田のギタープレイの進化とともにバンドは音楽スタイルを変え、日本のロックを牽引していきました。

今回は、ブルース・クリエイションのアルバムの中で、名盤の評価を受けるとともに、高額での買い取りが見込めるレコードを紹介させていただきます。

■ブルース・クリエイション / ブルース・クリエイション (Polydor, 1969)

ブルース・クリエイションのデビュー作です。この頃はブルース・ロック一色でしたが演奏はハードで、唯一無二の個性ある音楽を演奏していました。個人的な話ですが、一時期ブルース・ロックに夢中になり、エリック・クラプトンの在籍していたジョン・メイオール・ブルース・ブレイカーズ、フリートウッド・マックをはじめとする3大ブリティッシュ・ブルース・バンド、素晴らしいハープ演奏のきけるバタフィールド・ブルース・バンドなどを聴き漁っていた事があるのですが、そうした英米の名ブルース・ロック・バンドと比べても、迫力で勝るほどの演奏ではないかと思います。竹田和夫のギターはこの時点ですでに素晴らしいですが、この時期に在籍していたヴォーカルの布谷文夫が、ハウリン・ウルフばりの強烈な濁声で、凄い迫力です。

レコードはヒットまでは届かず、長く再発されない状態が続いたため(初のアナログ盤再発はなんとベルギーで、2016年)、初期盤はプレミア状態となっています。また嬉しい事に、2020年に日本とロシアで再プレスとなりましたが、これもいずれプレミア化必至ではないでしょうか。日本のロックの隠れ名盤だと思います。

■ブルース・クリエイション / 悪魔と11人の子供達 (Denon, 1971)

1971年発表、ブルース・クリエイションといえばこのレコードという1枚です。音楽性は前作から変化、ブルース・ロックの延長にあるハード・ロック調になっています。リフを基調とし、マイナー調の曲が多いためか、初期ブラック・サバスと比較される事があります。

Jロック名盤という事で人気が高く、再発も何度か行われています。中でも71年リリースのオレンジラベルのDenon盤は高額必至。Denon盤以外でも、間違いなく一定以上の査定が見込めるレコードです。

■ブルース・クリエイション / 白熱のブルース・クリエイション LIVE!  (Kitty, 1989)

CD時代になってから、URCがらみの音源として発掘されたブルース・クリエイションのライブ盤です。発掘録音なので軽視されがちですが、ブルース・クリエイションを1枚だけ聴くなら、圧倒的な演奏を聴くことが出来るこれが最強ではないでしょうか。スタジオ録音ではありえない疾走感とライブならではの迫力が素晴らしいです。

日本でCDは2度リリースされ、ジャケットが違います。初回リリースはコブラを首に巻いたジャケット、再発時はタイトルが「白熱のブルース・クリエイション」となり、竹田和夫のモノクロ演奏写真ジャケットです。いずれも6曲入りですが、実はこのCD、『Live 1971』の名で、アナログレコード2枚組としてプレスされました。こちらはボーナス4曲を加えた10曲入りになっています。

■クリエイション / ピュア・エレクトリック・ソウル (Express, 1977)

1975年、バンドは名称をブルース・クリエイションからクリエイションに変更します。クリエイション期は、ハードロック・バンドのマウンテンに在籍したフェリックス・パパラルディとコラボレーションしたアルバムのリリースや、アメリカを含む海外ライブツアーなど、野心的な動きが目立ちました。

アルバムでは、ジェフ・ベックなどのロック寄りのフュージョン路線に踏み込んだ本作が白眉ではないかと思います。このアルバムからは、プロレスで人気を博していたザ・ファンクスの入場テーマとして使われたインスト曲「スピニング・トー・ホールド」がヒットしました。竹田和夫の見事なギターソロだけでなく、ナラダ・マイケル・ウォルデンばりのタイトなドラムなど、バンド全体が素晴らしいです。

■日本の名ロックバンドは70年前後に集中

日本のロック黄金時代がどこだったのかを考えると、ひとつの答えは70年前後ではないでしょうか。先駆としてゴールデン・カップスやモップスといったロック色の強い実力派のグループサウンズが存在し、ジャックス、ブルース・クリエイション、ストロベリー・パス、乱魔堂、外道といったバンドが登場、いま聴いても心が沸き立つような名盤がひしめいています。この時代のレコードが見直されてプレミア化しているのは、レアである以上に、音楽自体が非常に素晴らしいからだと思います。70年前後の日本のロックは、あの時代にしか生まれえなかった幻の音楽なのかも知れません。

もし、ブルース・クリエイションのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。