テキサスのロックは豪放で荒いイメージがありますが、ブルースの聖地のひとつでもあるためか、実は細やかなテクニックを持つ優れたギタリストが多いです。スティーヴィー・レイ・ヴォーンもテキサス出身であり、ここで紹介するZZトップのビリー・ギボンズもジミ・ヘンドリックスも絶賛のテクニックと表現力を持っていました。

今回は、ZZトップのアルバムのうち、名盤レコードであるとともに高額買い取りが見込めるレコードをご紹介させていただきます。

■The Moving Sidewalks / Flash (Tantara, 1968)

のちにZZトップに参加する事になるギタリストのビリー・ギボンズが在籍していたのが、サイケデリック・ロックバンドのムーヴィング・サイドウォークスでした。サイケといっても色々ありますが、このバンドはブルースロック色が強く、その上に電子オルガンが重なる事でサイケ色を強くしていました。このバンドがジミ・ヘンドリックスの前座を務めた際に、ジミヘンのあの有名な発言につながったそうです。

ジミヘンの絶賛とビリー・ギボンズの出身バンドという事で話題にのぼるレコードですが、しかし発表当時は売れたと言えるレベルではなく、そのために発表当時にプレスされたLPレコードの入手は困難、プレミア化している1枚です。

■ZZ Top / Rio Grande Mud (1972)

ZZトップのセカンドアルバム、大名盤レコードといってよい超快作です。持ち駒の多い70年代ZZトップの音楽をひとことで形容するのは難しいですが、イメージのひとつはハードなブギを得意とする点ではないでしょうか。ロックの中でブギほど心地よい疾走感を表現できるリズムはないと思いますが、ハードロックに近いサウンドでブギを演奏させたら、ZZトップとフォガットのふたつにかなうグループはないのではないかというほど。本アルバムのオープニング・ナンバー「Francine」はその好例でしょう。

他にも、「Just Got Paid」、「Bar-B-Q」、「Whiskey’n Mama」、「Down Brownie」などの強烈なビート感とテクニカルなリフを持つハードロック調の曲の連続も、バンドのカラーを決定づけており、ファーストアルバムではまだ方向性の定まっていなかったバンドのいく道がここで決まったように思えます。

このアルバム、盤によってソロの尺やフェードアウトのタイミング、そしてミックスなどに違いがみられ、コレクター心をくすぐられる1枚。近年はオリジナル・ミックスが良いという声も出てきたようで、LPレコードの再評価が進んでいます。

■ZZ Top / Tres Hombres (1973)

セカンド・アルバムからしばらくのZZトップのアルバムに外れなしの傑作揃いですが、その中でもプラチナムを獲得した本作は、70年代のZZトップのレコード作品でもっともよく聞かれた1枚でしょう。演奏も絶快調で、ハードブギ、ハードロック、ブルースロックが混然一体となった音楽が展開されます。切れ目なく繋がる冒頭2曲の格好良さは鳥肌もの。さらに2小節でひとつのリフを繰り返し、ギターソロになった瞬間の突然の転調が快感のハードブギ「La Grande」では、のちのビリー・ギボンズの表現の特徴のひとつともなるハーモニクスを多用したインプロヴィゼーションも聴かれます。

LPは見開きジャケットで内側にはあふれかえったビールにメキシコ料理が大写しとなっており、内袋にはテンガロンハットをかぶり、煙草をくわえ猟銃を構えた男たちのスナップ写真がいくつもレイアウト、ZZトップのあくの強いロックを生んだテキサスの匂いを感じさせます。こうした仕様はLPレコードならでは、人気盤のひとつです。

■ZZ Top / Fandango! (1975)

ZZトップ4枚目のアルバムです。A面ライブ、B面スタジオ録音という内容で、A面のライブが凄まじいです。

オーバーダビングが使えないライブはバンドの実力が分かりやすく、これを成立させるギタリストはエクスペリエンスのジミ・ヘンドリックス、クリームのエリック・クラプトンなど、実力者ばかりです。ZZトップも3ピースのバンドですが、このライブ盤での演奏が強烈で、音の圧力も演奏もむしろライブの方がすごいのではないかというほど。プレスリーの「監獄ロック」がここまで凄い事になるのかと驚かされました。演奏のテクニックもさることながら、70年代ZZトップのトレードマークのひとつであるファズのファットなサウンドが音楽の圧力の一因にもなっていると感じます。

■ZZトップは豪放さと繊細なテクニックが共存する70年代が素晴らしい

今回は取りあげませんでしたが、続く5作目『Tejas』でのドラムはジャズさながらのレギュラーグリップでのパラディドルを聴けるなど、72年から76年までのZZトップのアルバムには外れがありません。デジタルで単純さの目立つ80年代以降のZZトップを聴くと分かりにくいですが、アメリカのトラック野郎ご用達の荒さや豪快さを持ちつつ、生半可なプログレッシブ・ロックのミュージシャンでは到底かなわないほどのテクニックを持つロックバンド、それが70年代のZZトップではないでしょうか。荒さや熱っぽさは感じるものの、技術がぞんざいな南部のロックとは一線を画しているように感じます。

もし、ZZトップのLPレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かるレコード専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。