今年の夏も暑いですね。それにしても、高校野球の試合中に選手が何人も倒れる夏は、ちょっと記憶にありません。そんな暑さを吹き飛ばすには、やはり音楽!というわけで、今回は日本の夏バンドを取り上げさせていただきます。

サザンオールスターズは、大学の音楽サークルに集まった仲間たちで作られたバンドです。サザンオールスターズがデビューした1978年といえば、原宿で竹の子族が流行、ディスコ・ブームも起き、すかいらーくなどのファミリーレストランも盛況となった時代で、戦後から続いてきた重い世相の中に軽く楽しい若者文化が食い込み始めていました。

そんな中に登場したサザンオールスターズは、まさに時代の音でした。海に遊びに行っても、ラジカセからも、遊び疲れた後のバーガーショップでもサザンが聴こえ、友だちと貸し借りするレコードも…。ここから数年で、毒舌の冴えわたるツービートを中心とした漫才ブームや、YMO というポップ・ミュージックの最先端を行く音楽と絡んだスネークマン・ショー、プロレス中継でもユーモアある古舘伊知郎が司会を務めるようになるなど、ある種の羽目を外したユース・カルチャーが流行。サザンオールスターズは、流行のポップスというだけでない、70~80年代のユース・カルチャーの象徴という側面をすら持っていたように思います。

今回は、サザンオールスターズの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■熱い胸さわぎ (invitation, 1978)

サザンオールスターズのデビュー・アルバムです。デビューシングルとなった「勝手にシンドバッド」が衝撃。私がこの曲を初めて聴いたのは、始まったばかりの歌番組「ザ・ベストテン」での事でした。半裸で汗を拭きとばしながら歌い、熱狂する観客を煽るように言葉を畳みかけ、そして例の「いま何時」の掛け合いにはユーモアを感じもしました。速すぎて桑田佳祐自身が歌詞を歌えずにでたらめに歌う事もあり、トークもまた面白かったもので、大学生のお兄さんたちがはしゃぎながらやっているコミック・バンドのように感じていました。

コミック・バンド的な側面としては、「女呼んでブギ」も秀逸。「女呼んでもんで抱いていい気持ち」という出だしの歌詞…「もんで」なんですね。

サザンオールスターズは、デビューしてからリリースした最初の4枚のシングル・レコードのうち3枚までが、マシンガントークの桑田節が入ったラテン調のアップテンポ曲。レコード会社もプロダクションもこれをバンドイメージに据えた事は間違いありませんが、アルバムを聴くとそれだけではない音楽性の広さが分かります。スライドギターの決まるサザンロック調、レゲエ調、フィフティーズ調など様々ですが、中でも平歌が美しいボッサ調の「別れ話は最後に」は名曲と思います。

■10ナンバーズ・からっと (invitation, 1979)

コミック・バンドで終わった可能性もあるサザンオールスターズが、日本を代表するポップロック・バンドのひとつに数えられるようになったのは、名バラード「いとしのエリー」のヒットがあったからではないでしょうか。このレコードは、その「いとしのエリー」を含むセカンド・アルバムです。

ユーモアを含めたパフォーマンスがブレイク、音楽番組への出演で引っ張りだことなった中での不本意な制作状況となった事から、桑田佳祐はこのレコードの出来に納得は出来ていないそうです。たしかに、複数のバージョンが収められた「アブダ・カ・ダブラ」などは、完成形を作りあげる所まで行かなかったのではないかとも思えます。そうした未完成の部分を感じる一方で、「勝手にシンドバッド」路線の名曲「思い過ごしも恋のうち」や、私がサザンオールスターズの全楽曲中もっともすぐれたものと感じる「ラチエン通りのシスター」などが含まれているのもこのアルバムです。

大学生が同級生の狭いアパートに集まって麻雀を楽しむ、ラジオの深夜放送を聴きながら徹夜で試験勉強をする…そういった70年代後半の日本の若者の文化が、外連味なしにそのままあらわれているように感じるのが、初期サザンオールスターズの魅力のひとつと感じますが、その傾向が特に強いのが最初の2枚のアルバムでした。

■すいか SOUTHERN ALL STARS SPECIAL 61SONGS (タイシタレーベル, 1989)

1989年発表、CD4枚組のサザンオールスターズのベスト盤です。全61曲、シングル・カットされたレコード以外の曲も含めて年代順に並べられているために、バンドの音楽性の変遷をたどることが出来るという大きな魅力を持つアルバムともいえるのではないでしょうか。

デビューから89年までの間、最初の5枚のアルバムはライブ・バンドのバンド・ミュージック風。それがサザンオールスターズのプライヴェート・レーベルに等しい「タイシタレーベル」から作品を発表するようになると、シンセサイザーの導入を含め過剰なスタジオ・ワークへと走り、表向きは原由子の出産を理由として85年でバンド活動が休止します。

そこから復活したのがこの時期で、バンドは音楽と自分たちの原点を見つめ直したように感じます。そして、シングルでは1度も1位を取れなかったサザンオールスターズがはじめて1位を取ることが出来たのが、このボックスが出た89年になっての事でした。復活となったシングル「みんなのうた」はオリジナル・アルバムには収録されませんでしたが、このベストに収録されました。

■TSUNAMI (タイシタレーベル, 2010)

桑田佳祐は素晴らしいバラードをたくさん書いていますが、そこにはある癖というか、特徴があるように感じます。少しだけ専門的な音楽用語を使えば、変化和音とかクリシェといわれる技法がそれで、同じ和音の中でいくつかの音と動かして変化させていくものです。この手法は、「真夏の果実」、「いつか何処かで」、そして「TSUNAMI」のサビ部分などでも聴くことが出来ます。

この曲は東日本大震災を受け、そのタイトルから一時は放送などを自粛する動きが見られ、バンドもライブでの演奏を控えるようになりました。しかし詞も曲も決して不謹慎なものではなく、桑田佳祐の書いたバラードの中でも有数の名曲でもあり、この曲を愛するDJやファンの後押しもあって、今ではその傾向も緩まっています。

■レコード高価買取に関するあれこれ

「TSUNAMI」はシングルですが、レコードでは12インチLPサイズで数量限定リリースとなり、現在ではプレミア状態です。一時は数万円をつけましたが、現在は1万円を切る状態に落ち着いてきましたが、それでもシングルでその価格は充分なプレミアでしょう。

「すいか」は数量限定であったために、発売当初からあっという間にプレミア化しました。レンタルCD店などでも扱われたため、外装となるすいか模様の缶ケースがないものも見かけますが、それですら1万円を超える状態です。缶ケースやその他同封物が揃っていると、その倍近い値段は普通につく状態となっています。

もし、サザンオールスターズのレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。思わぬ高額買取りレコードになるかもしれません。