南アフリカ出身のジャズ系の鍵盤奏者であったマンフレッド・マンは、アパルトヘイトに反対して1961年にイギリスに移住。ここでブリティッシュ・ビートの流行に乗ってロック・バンドを結成し、これがマンフレッド・マンの伝説の始まりとなりました。「Pretty Flamingo」などのヒット曲に代表されるポップな音楽性を持ったバンドとしてのマンフレッド・マン時代、ジャズという視点からレア・グルーヴに迫ったマンフレッドマン・チャプター・スリー、プログレッシヴ・ロックともソウルともポップスともつかない独特の音楽を作ったマンフレッド・マンズ・アース・バンドと、時代によってバンドを変え、音楽性を変化させながら、時には大衆的、また時には独特で高度な音楽を創りあげました。

今回は、マンフレッド・マンの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■Manfred Mann / The Manfred Mann Album (Ascot, 1964)

マンフレッド・マンとは、キーボード奏者のマンフレッド・マンの事だけではなく、60年代初頭に結成されたバンドの名称でもあります。バンドは63年にレコード・デビューし、翌64年にイギリスのミュージックTVショーのオープニング・ナンバーとなる「5-4-3-2-1」を書きあげて名を知らしめ、そして代表曲「Do Wah Diddy Diddy」で英米双方のシングル・チャートで1位となりました。

マンフレッド・マンはブルースやR&Bも演奏しながら、非常にポップな曲を次々に書き上げたバンドでした。このレコードに収録された「Do Wah Diddy Diddy」などはその最たるもので、アメリカのシングル・チャートで最初に一位をとったブリティッシュ・ビート・バンドがマンフレッド。マンであった事もうなずける内容です。

60年代初頭の多くのイギリスのビート・ミュージック・バンド同様、マンフレッド・マンも英米で違う形のアルバムを発表する事になりましたが、『The Manfred Mann Album』は、アメリカでのデビュー・アルバムです。マンフレッド・マンのヒット曲といえば、前述「Do Wah Diddy Diddy」と「Pretty Flamingo」が有名ですが、これらの曲はUKアルバムを揃えても聴く事が出来ません。しかしUS盤で揃えるとどちらも聴く事が出来、このアルバムには前者が収録されています。

■Manfred Mann Chapter Three (Vertigo, 1969)

1969年にバンドのマンフレッド・マンが解散すると、キーボーディストのマンフレッド・マンはすぐに次のグループを結成、それがマンフレッド・マン・チャプター・スリーです。ジャズ・ロックとレア・グルーヴを融合したかのようなその音楽性は、バンド「マンフレッド・マン」と同じリーダーが作ったとは思えないものでした。

はじめてこの音楽を聴いた時は、あまりの格好良さに引きずり込まれました。同一パターンが数小節単位で繰り返されるオスティナートの上に、決して上気しないブラス・セクションが重なり、オルガンやピアノがアドリブを繰り広げます。このクールな音楽が持つ鳥肌ものの魅力は、聴かなければなかなか分からないでしょう。音楽性の高さだけで言うなら、マンフレッド・マン最高傑作はこれではないでしょうか。

マンフレッド・マンは、イギリス移住前は南アフリカのヨハネスブルグでジャズ・ピアニストとして活動しており、その音楽能力の高さが、チャプター・スリーに繋がったのではないでしょうか。

■Manfred Mann Chapter Three / Volume Two (Vertigo, 1970)

アルバム2作を発表して解散したマンフレッド・マン・チャプター・スリーですが、その2枚のアルバムがどちらも大名盤で、独創力あふれる作品となっています。セカンド・アルバムとなったこのレコードは、構造面ではファースト・アルバム同様のループ構造が基調となっていますが、演奏はより積極的で、ジャズ・ロック色が強まります。アルバム冒頭曲「Lady Ace」の、展開部で満を持して登場するブラス・セクションのトゥッティ、それがダブル・タイム・フィールを形成してブローイング・コーラスに突入していく様、再起部でセクションが対旋律を形成する立体構造など、随所に鳥肌が立つほどの素晴らしさ、これに似た音楽を私は聴いた事がありません。

■Manfred Mann’s Earth Band / Solar Fire (Bronze, 1973 )

チャプター・スリーを解散後、マンフレッド・マンは次のバンドであるマンフレッドマンズ・アース・バンドを結成しました。時期や作品によって音楽の傾向が異なるバンドですが、これは73年に発表された4作目で、これをアースバンドの代表作とする人も多いのではないでしょうか。ホルストの惑星組曲を参考にしたコンセプト・アルバムで、始まりは闇、そこから太陽の炎、土星、地球という順で音楽が進行していきます。

■レコード高価買取に関するあれこれ

60年代の「バンド」マンフレッド・マンのアルバムは、いずれも高額になりやすい状態ですが、これは希少価値によるところが大きいのかも知れません。今回ご紹介させていただいた『The Manfred Mann Album』に関して言うと、面白いのは日本リリースとなった紙ジャケット仕様のCDが、大変な高額となっている事です。これはオリジナル収録曲のほか、「5-4-3-2-1」や別テイク、モノ版、オリジナル未収録曲などを多数収録しており、日本のみならず海外でも、すでに定価の倍以上の値となっています。同様に、US盤『My Little Red Book of Winners!』の日本CD化もプレミア状態となっています。

チャプター・スリーのレコードは、どちらもUKオリジナルはプレミア、1万円はあたり前で、2万を超す事もあります。また、UKオリジナルでなくとも、アナログ・レコードであれば一定以上の高評価を受けています。

もし、マンフレッド・マンのレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。思わぬ高額買取りレコードになるかもしれませんよ。