ジャズ黄金時代となった50年代ハードバップ期を代表するアルト・サックス奏者のひとりが、キャノンボール・アダレイです。大学院で研究をしにフロリダからニューヨークに出てきたつもりが、オスカー・ペティフォードのバンドへエキストラ参加をきっかけに注目を集め、バップ期のジャズのスターダムへとのし上がりました。

チャーリー・パーカー登場以降、高度に発展していくジャズのアドリブ演奏に多くのサクソフォニストが四苦八苦する中、歌うように自在なアーティキュレーションをつけてアルト・サックスを演奏するキャノンボールの演奏は特別でした。その演奏にはマイルス・デイヴィスも惹きつけられて自身のバンドに起用、後続するサクソフォニストからも高く評価されました。デイヴィッド・サンボーンに至っては、「チャーリー・パーカーは別格としても、アルト・サックス最高峰はキャノンボールだ」と評するほどでした。

今回は、キャノンボール・アダレイの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■LPレコード紹介Cannonball Adderley / Presenting Cannon Ball (Savoy, 1955)

キャノンボール・アダレイの初リーダー作です。ニューヨークのジャズ・シーンで活動していたわけでもないキャノンボールが、ふと立ち寄ったオスカー・ペティフォードのギグに参加したその年にリーダー・アルバムが録音されてしまうのですから、その注目のされ方は相当なものだったのでしょう。演奏は、流麗なアーティキュレーションを聴かせるもので、これが新人の初リーダー作とはにわかには信じがたい老獪さでした。ハンク・ジョーンズ(p)、ポール・チェンバース(b)、ケニー・クラーク(dr) といった一流ミュージシャンをサイドマンとして使いこなす貫禄も見事でした。

■Cannonball Adderley / Somethin’ Else (Blue Note, 1958)

ブルーノートの、そしてモダン・ジャズの代表的名盤のひとつです。マイルス・デイヴィスとの共演でも名高い1枚で、有名な「枯葉」の演奏では、ヘッドやブローイング・コーラスのトップをマイルスが演奏する事から、本当はマイルスのリーダー・セッションだったのではないかとファンの間でささやかれた事もあります。

しかし、この素晴らしいアドリブを聴けば、キャノンボールをリーダーとするのは自然ではないでしょうか。アート・ブレイキーの叩くドラムのハイハットやらライドなどの金物の録音の良さもあり、ブルーノート1500番台でのリディ・ヴァン・ゲルダ―による録音は、オーディオ・ファンにとっての名盤でもあります。

■The Cannonball Adderley Quintet / in San Francisco (Riverside, 1960)

デビューから数年で、サヴォイ、エマーシー、ブルーノート、そしてリバーサイドからリーダー・アルバムを出してしまうのですから、やはり注目のされ方は相当なものだったのでしょう。特に50年代後半から60年代前半のリバーサイド時代は、ナット・アダレイと組んだ録音が多く、ハードバップのスター・プレーヤーとしてのキャノンボールの本領をもっともよくあらわした時代とも言えます。

このレコードはライブ盤のうえ、ボビー・ティモンズがピアノです。それもあってか、泥臭さと熱さが漂うものでした。デビュー・レコードでも演奏した「Spontaneous Combustion」のキャノンボールのソロは絶品、オリジナル・ナンバー「You Got It!」の疾走感も快調、アドリブ重視の熱く楽しいジャズを聴く事が出来ます。

■Cannonball Adderley / Know What I Mean? (Riverside, 1961)

ピアノがビル・エヴァンス、リズム・セクションがモダン・ジャズ・カルテットという知的なサイドマンで固めた、キャノンボール・アダレイのレコードの中では異色な作品です。音楽の構成の仕方が、コーラスを繰り返すという考え方ではなく、クライマックスに向けて構成していくというクラシカルな作り方で、キャノンボールのリーダー作の中でもっともアーティスティックな作品と言えるのではないでしょうか。

■Cannonball Adderey Quintet / Mercy, Mercy, Mercy! Live at “The Club” (Capitol, 1967)

ナット・アダレイを含むキャノンボール・アダレイのバンドが、クラブ・ジャズやソウル・ジャズにも取り組んだアルバムです。このバンドのメンバーにもなっていたジョー・ザヴィヌル作曲の表題曲がR&Bチャートの上位に食い込みました。

とはいえ、ハードバップ路線の音楽も同時に演奏しており、これはモダン・ジャズ期を上回るほどの白熱度。他にも歓声をあげたくなるような明るくご機嫌な音楽が多く、プロ中のプロがソウル・ジャズやクラブ・ジャズを演奏すると、ここまですごい事になるのかと驚かされました。

■レコード高価買取に関するあれこれ

キャノンボール・アダレイのレコードといえば、やはりブルーノート盤『Somethin’ Else』に人気が集中するようです。USオリジナルであれば高額必至。2022年5月の国内某オークションでも、4万円を優に超える値をつけていました。USオリジナル以外でも、アナログ・レコードであれば高額のつきやすい状態です。

『In San Francisco』をはじめとしたリバーサイド盤は、面白い事にCDでは低めの価格にもかかわらず、LPレコードでは一定の評価を集めています。実はCDのリマスタリングも優秀なのですが、やはりアナログで聴きたい音楽なのかも知れません。

もし、キャノンボール・アダレイのレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。思わぬ高額買取りをしてくれるかもしれません。