1969年から72年まで活躍したイギリスのロック・バンドのフリーは、ポール・コゾフの強烈なギタープレイを前面に押し出した素晴らしいハード・ブルース・バンドとしてデビューしました。しかし70年発表のセカンド・アルバムは、ハード・ブルースの色を残しながら、作曲面を強める方向にも音楽を発展させました。以降フリーの決して多くはないヒット曲となった「オール・ライト・ナウ」や「マイ・ブラザー・ジェイク」、あるいは劇的構造をもって展開し、以降のロック・バンドに大きな影響を与えた「ミスター・ビッグ」、これらはいずれもブルース・ロックから外れたナンバーで、セカンド・アルバムでの方針転換がこれらの曲を生み出す大きな要因となりました。
■ブリティッシュ・インヴェイジョンの2大潮流の衝突点
イギリスでロック・バンドが相次いでデビューした60年代前半から半ばにかけてはブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれ、西洋ポピュラー音楽の大転換点となりました。この時代のイギリスのロック・バンドは、アメリカン・フィフティーズに根差した音楽を追ったか、ブルースやR&Bに根差した音楽を追ったかで、大別する事ができます。ビートルズやデイヴ・クラーク・ファイブは前者に近く、作曲に優れますが、演奏表現はそこまでのものではない事が多いです。一方、アニマルズやブルース・ブレイカーズなどは後者に近く、演奏表現に優れるものの作曲がそこまで重要視されない傾向にあり、スリーコードだけで作られた曲も少なくありません。
その次に来たブリティッシュ・ロックの大きな波を60年代後半のハード・ロックとするなら、そこに属するバンド(たとえばクリームやレッド・ツェッペリン)は、ブルース・ロックに基礎を置いたバンドが目立ちました。
フリーもそのひとつでしたが、彼らはこのセカンド・アルバム『フリー』で作曲面を伸ばし、クリームやレッド・ツェッペリンとは違う道を歩むことになります。5音音階とスリーコードを基礎に置くブルースにはとても還元しきれない綺麗なコード進行を持つ「Lying In The Sunshine」や、ビートを排しブリティッシュ・トラッドを視野に入れていたのではないかと思われる綺麗なハーモニーを持つ「Mouthful of Grass」、短調曲「Mourning Sad Morning」などは、いずれもバンド・サウンドにもブルースにも還元できない曲です。
フリーはこのアルバムで、ブリティッシュ・インヴェイジョンのふたつの潮流を融合させたのではないでしょうか。
■レコード高価買取に関するあれこれ
ジャケットのデザインが美しいアルバムですが、このジャケットに映る人の影はブロンズ像などではなく、実際の女性です。ゲートフォールド仕様となるUKオリジナル盤の内ジャケットにはモデルとなった女性が写っています。そしてこのUKオリジナル盤はピンクのアイランド・ラベルで、状態が良いと1万円を超すプレミアとなっています。
また、69年には「フリーNo.2」というタイトルで日本盤も発売されましたが、これもピンクラベルとなっており、帯つきだと高額をつける事があります。
もし、フリーのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。