ジョージ・ラッセルといえば、リディアン・クロマチック・コンセプトという西洋のポピュラー音楽の常識を覆す音楽コンセプトを立て、ジャズどころか現代音楽の武満徹の作曲にまで影響を与えた理論家ビッグバンド・リーダー/アレンジャーです。そのあたりの評価もあるのか、クロマチック(半音階)やリディアン(ファの#した7音音階と、そこから構造化される和音組織)を前面に押し出した作品『Jazz In The Space Age』や『At Beethoven Hall』が有名ですが、実際にはその作品は難解なものばかりでなく、爽快きわまるレコードも多数。

そんな後者の代表作としてぜひ紹介させていただきたいのが、1958-59年録音のこのレコード『ニューヨーク・ニューヨーク』です。ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンス、マックス・ローチといったモダン・ジャズのスーパー・プレーヤーが多数参加、素晴らしいアレンジとソリッドなプレイが縦横無尽に決まるモダン・ビッグバンドの快作です!

■難解さはなし、でも超絶のアンサンブルはまさに天才肌!

「Manhattan」「Big City Blues」「A Helluva Town」…収録曲のタイトルを見ればわかるように、『ニューヨーク・ニューヨーク』は、東海岸のジャズのメッカとなったニューヨークの色々な表情を音楽で描き出したコンセプト・アルバムです。人々が躍動する50年代のマンハッタンや、その路地裏で夜に紡がれるピアノ・ブルースなど、その表情は多様。音楽のための音楽ではなく、いわば叙景的な音楽を目指した節も音からは垣間見られるだけに、音楽もジョージ・ラッセルの作品にしては難解さもあまり感じられず、ハードにしてもメロウにしても、情緒的な側面が強く出ていると感じます。

しかしそれはリスナーに迎合した作品という意味ではありません。「Manhattan」では3コースに分かれた管楽器セクションがカノン状の綾を織り上げ、しかもその演奏はビッグバンド・ジャズ特有の強烈なソリッドさ。まるで複雑に折り重なるジェットコースターのような迫力です。その直後にはテンポとリズムをいっせいに変え…ハードバップ興隆以降の50‐60年代は、ビッグバンドにとって厳しい時代となりましたが、しかしその時代のジャズの理論的支柱となったジョージ・ラッセル、ギル・エヴァンス、カーラ・ブレイの全員がビッグバンド・アレンジャーであった点は、こういう素晴らしい音楽を聴くと納得のいく所ではないかと思います。

■レコード高価買取に関するあれこれ

『ニューヨーク・ニューヨーク』には、モノ盤とステレオ盤が存在しています。いくつものラインの交錯するアンサンブルが驚異の作品ですので、個人的には右から左から正面から音が飛び出してくるステレオ盤がおすすめですが、プレミア化しているのはモノ盤の方。USオリジナルのモノ盤は1万円超えも普通にみられる状態です。

ジャケット違いとして、摩天楼が絵になり、イメージカラーも赤になる61年ドイツ盤があります。これもモノ盤とステレオ盤がありますが、珍しさもあってか、USオリジナルほどではないにせよ、それなりの値をつける状態です。

もし、ジョージ・ラッセルのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。