阿部薫と並んで日本のフリージャズのサクソフォニストを代表する高木元輝。そのキャリアにはセミリタイアした期間があり、その期間を挟んで、表現や音楽自体の傾向が大きく変わりました。レコードから振り返ると活動初期にあたるのが、富樫雅彦カルテットに参加した69年から、初期の高木元輝ただひとつの単独リーダーアルバムが発表された75年まで。高木といえば間違いなく初期の演奏が絶品ですが、初期に記録された唯一の単独リーダーアルバムがこの『モスラ・フライト』です。ピアノレス・トリオによるライブ録音は、初期高木の集大成ともいえる素晴らしい内容でした。

■初期高木元輝の到達点、爆発的な演奏の裏にある見事な構成力

このレコードは、アルバムを通して全4曲。しかも2曲ずつ切れ目なく演奏され、それがただのメドレーではなく2曲ひとまとまりで見事な様式を生み出し、さらにその2つの塊が動と静、光と闇のような対比的な性格を持つため、アルバムを通してひとつの作品のように感じられます。

69年のレコードデビュー当時から、アメリカのフリージャズを凌駕するほどの爆発力ある演奏をしてきた高木元輝ですが、そうした音の瞬間的きらめきだけでなく、音楽としても緊張感を失わずに高い完成度を持つものでした。そのように出来たのは、音楽全体の構成をしていた点にあるように思われます。実は、60~70年代の高木元輝には、なんのモチーフや構成譜や曲も用いずに即興だけで演奏したものはないのです。このアルバムでは自作曲3曲のほか、アート・アンサンブル・オブ・シカゴの曲も演奏していますが、これらにコントラストをつけながら、まるで4楽章の交響曲のように鳴らし切った点は、単にフリージャズと呼ぶに余りある見事な音楽でした。

■レコード高価買取に関するあれこれ

このレコードのLPは1975年発売時の1度だけで、リリース元となったInterval というレーベルが発表した作品もこれだけです。こうした事情から鑑みると、プライヴェート盤に近いプレス数だった事は間違いなく、3万円や4万円の値がつく事が当たり前の超レア盤となっています。なお、このレコードはのちにCD化されましたが、少なくとも2003年のCD化はLP盤起こしで、チリパチの音が聴こえます。恐らくマスターテープが残っていないのでしょうが、それだけに希少価値だけでなく音質面でも75年リリースのLPレコードは価値があります。

もし、高木元輝のレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。