サイケデリック・ロックもプログレッシヴ・ロックも、黎明期のジャーマン・ロックを体験し、その凄まじさや独創性の虜になった事があります。そんな黎明期ジャーマン・ロックの名バンドのひとつに挙げられるのがアモン・デュール、そしてそこから派生したグループのアモン・デュールⅡです。

1967年にドイツのミュンヘンで結成されたアモン・デュールは、当初は政治や芸術の活動をするコミューンだったそうです。結成当時のアモン・デュールのパフォーマンスを見ていたギタリストのシュッケルトによると、そのライブは「音を左右のPAにガンガン飛ばして、かなりアヴァンギャルドで凄かった」そうです。しかしコミューンの中で音楽寄りだったメンバーが離脱してアモン・デュールⅡを結成、こうしてアモン・デュールを名乗るバンドが並行して存在する事になり、双方ともにジャーマン・ロック史に残る名作を発表する事になりました。

今回は、過激きわまる黎明期ジャーマン・ロックの名バンドであるアモン・デュールとアモン・デュールⅡの名盤や高額買取レコードを紹介させていただこうと思います。

■Amon Düül / Psychedelic Underground (Metronome,1969)

ディストーションがかった何台ものドラムやパーカッションが鳴り響いてポリリズムを形成、歪んだギターが同じフレーズを繰り返し、遠くで人々の唸り声が聴こえます。この呪術的ともいえる演奏に、過激ともいえるカットアップやサウンド・エフェクトが加えられて音楽が形をあらわします。同じドラッグ・ミュージックでありながら、同時代のアメリカ西海岸のそれがどこかフワフワと心地よく感じるのに対し、ドイツのそれはまるでバッド・トリップ、悪夢のようですらあります。そしてそれをこと音楽として聴くのであれば、ドイツの方が強烈であるのは明白で、どこまで行ってもアメリカン・ソングフォームの外に出る事のない英米のロックではまず体験できない世界が広がっています。

アモン・デュールのみならず、ジャーマン・ロック不朽の名盤レコードです。昔から超がつくほどの高額で買取されていたレコードでもあり、エメラルド・グリーンのラベルが美しいドイツ・オリジナルのMetronome盤レコードはロックの人気レア盤の代表格ともいえるもので、法外な価格で取引/買取りされていた事もありました。また、ジャケット違いとなる70年発表のUS盤もそのサイケデリックなデザインの美しさからか、高額で取引されています。

■Amon Düül / Collapsing Singvögel Rückwärts & Co. 崩壊 (Metronome,1969)

グループ解散後に発表されたものを含めると、アモン・デュールは5枚のアルバムを発表しています。うち4枚は同一セッションの演奏をコラージュ、リミックス、SEの追加などして完成させたものです。デビュー・アルバム『Psychedelic Underground』に次いで発表されたこのアルバムもそのようにして作られたアルバムで、ファースト・アルバムと同じ演奏が時折顔を出す事もあります。2作目という事もあるのか、そのギミックの完成度は前作を上回る素晴らしさで、コラージュの素晴らしさゆえか、まるでダダやフルクサスの作品を鑑賞しているような錯覚に陥る事すらあります。

リアルタイムでは3タイトルしか発表されなかったアモン・デュールのオリジナル・アルバムながら、オフィシャルには発表当時のドイツ盤しか存在しないだけに(2000年代に入り、ブラジルやロシアでブート盤LPレコードが製造された)、非常にレア度の高いレコードで、高額買取が見込まれます。しかし、私はこのLPレコードのオリジナル盤を日本で目にしたことがないので、いくらの値で買取されるのかは想像も出来ません。

■Amon Düül II / Phallus Dei 神の鞭 (Liberty, 1969)

オリジナルのアモン・デュールが音楽衝動のみで音を吐き出していたのだとすれば、そこから枝分かれして出来たアモン・デュールⅡは、そうした衝動を音として構成するだけのプレイアビリティも作曲能力も有するバンドでした。オリジナル・デュールのデビュー作と同年にリリースされた本作はデュールⅡのデビュー・アルバムであり、ただならぬ雰囲気と強烈な熱気に満ちたアルバムです。

オリジナル・デュールから独立してデュールⅡを作ったのはギタリストのクリス・カラーですが、インプロヴィゼーションに満ちたこのアルムでのカラーは、町長や単調に終始することなく、独特な音階を用いて独特の雰囲気を音楽にもたらします。また、カラーとともにデュールⅡに移ったペーター・レオポルドのドラム、同じく黎明期ジャーマン・ロックを代表するバンドのひとつであるアシュ・ラのクラウス・シュルツェのそれに匹敵するほどに壮絶です。

■ジャーマン・サイケの大本命アモン・デュール/デュールⅡのレコード買取は、人気の初期作品が高額

LPレコードは第2次世界大戦後に生まれたメディアで、その世界マーケットを押さえたのは戦勝国のアメリカとイギリスでした。それだけに、それ以外の国は両国の後塵を拝する事になりましたが、音楽そのものが劣っていたわけではありません。特にクラシック大国であるドイツの音楽は、ロックにおいても優れた作曲技法や演奏技術の教育を受けていたグループが少なくなく、一度聴くと商業性の強すぎる英米ロックを凌駕するものが少なくなりません。しかし英米のLPレコードのような世界発売の目を見なかったアルバムが多く、それだけにレア度は増し、買取の相場が跳ね上がるものも少なくありません。アモン・デュール『Psychedelic Underground』は、その最たるものではないでしょうか。

もしアモン・デュールやデュールⅡのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。