矢沢永吉やジョニー大倉らが在籍、社会現象と呼ばれるほどのブームを起こしながら、レコードデビュー後2年半ほどで解散したロックンロールバンドがキャロルです。革ジャン、リーゼント、ロックンロールというスタイルは良くも悪くも暴走族や不良文化の象徴となり、そのため音楽が軽視される事もありますが、キャロルほど熱くロックンロールを演奏したバンドは今も日本に登場していないのではないでしょうか。

今回は、そんな日本の最重要ロックンロールバンドのひとつであるキャロルのアルバムのうち、名盤レコードであるとともに高額買い取りが見込めるレコードをご紹介させていただきます。

■ライブ・イン“リブ・ヤング” (1973)

キャロルはレコードデビュー以前にテレビ出演を果たし、そこから全国区の人気を得たバンドです。その出演番組がフジテレビ制作の『リブ・ヤング』で、音楽・映画・ファッションなどを紹介する若者向け情報番組でした。革ジャン、リーゼント、ロックンロールで登場したキャロルは一気に業界の注目を集めます。カメラマンの篠山紀信はそのファッション性に注目、またミッキー・カーチスはテレビ局に電話してキャロルと接触して録音を決断。これがキャロルのデビューに繋がりました。このあたりの経緯は、ベストセラーとなった矢沢永吉の自伝『成りあがり』に詳しく書かれています。

そんなキャロルにとって切り離せないリブ・ヤングでのステージを収録したのがこのライブ盤です。この演奏はメジャーデビューを決めた初出演回ではなく、レコードデビュー後で、すでに多くのヒット・シングルを飛ばした後の出演時のものです。それでもライブ・バンドとして名声を轟かせたキャロル初のライブ盤には違いなく、仮にサイドギターがいなかったとしてもバンドのオーケストレーションを成立させられただろう内海利勝のギター、そしてポール・マッカートニーどころかジャック・ブルース並みに自在なバス・ラインを作る矢沢永吉のベースは特質ものです。

今はなきフィリップス傘下の日本フォノグラム・レコードからデビューした事もあって、キャロルのアナログレコード盤はすべて価格が高騰しています。このレコードも例外ではなく、年々価格が上昇している傾向にあります。また、カセットは収録曲違いで曲数も多く、LPレコード以上にプレミア化しています。

■ルイジアンナ (1973)

ミッキー・カーチスがプロデュースした、キャロルのデビュー・アルバムです。A面がオリジナル曲で日本語詞、B面がカバー曲で英語詞です。

「ルイジアンナ」「ヘイ・タクシー」「ホープ」といったオリジナル曲は、今となっては日本のロックンロールの定番と化しています。カバーではチャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」を日本に広めるきっかけとなり、デイブ・クラーク・ファイブのロックンロール・メドレー用ナンバー「グッド・オールド・ロックンロール」は本家を上回るほどの演奏。とてもデビュー作とは思えない完成度のロックンロール・アルバムです。日本最初期のマルチトラック・レコーディングされたアルバムでもあり、楽器の定位などにその痕跡をうかがうことが出来ます。

キャロルは人気絶頂時に解散したこともあって、解散後に大量のコンピレーション・アルバムが発表される状況になりましたが、スタジオ録音のアルバムは実は3枚のみ、ライブ・アルバムを含めても合計で5枚のアルバムしか残していません。アルバム『ルイジアンナ』はその中でも人気の高いアルバムで、内容のみならずLPのエンボス加工された見事なジャケットもレコード価格高騰の一因となっているのかも知れません。

■燃えつきる – キャロル・ラスト・ライヴ!! 1975.4.13. (1975)

キャロルの解散コンサートのライブ録音盤、レコード2枚組です。日本のロック史に残る白熱の演奏という事もありますが、人気絶頂の中での解散コンサートという事もあって会場の収容人数の倍を超える観衆が押し寄せ、またステージセットが事故で炎上する騒動になるなど、ニュース性も相まって伝説化したコンサートでもあります。同ステージはドキュメンタリー調に編集されて映像化され、ビデオではキャロルの親衛隊を務めた舘ひろしや岩城滉一が在籍するクールスの様子や、日比谷野音の炎上シーンも観ることが出来ます。しかし音楽を楽しむのであれば、全曲をカットなしで収録している音盤が優るでしょう。

残された正規の音源の中からキャロルのベスト・パフォーマンスを選ぶとしたら、間違いなくこれでしょう。

■安保闘争後に揺れた日本の社会現象

キャロルは音楽のみならず、70年安保が終わった後の日本の世相を反映した社会現象であったように思います。戦後の独立の道が絶たれて他国の基地が自国領土にあるという異常な状況を受け入れさせられ、受験戦争が加速してそのカウンターで暴走族が増え、そうした中で「社会に頼らず、唯我独尊で強く生きる」という若者の標識と化したのがキャロルであったようにも思えます。

70年代以前の日本のポップス/ロックのLPレコードの高騰は進むばかりですが、キャロルもその中の重要タイトルでしょう。もし、キャロルのLPを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かるレコード専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。