イギリスのロック史は、ビートルズから始めれば大方問題ないですが、アメリカン・ロックはそう簡単にはいかないと感じた事はないでしょうか。チャック・ベリーやエルヴィス・プレスリーは間違いなくロックでしょうが、それは50年代なかばの事。その後の50年代末から60年代初頭はどうなっていたのでしょうか。その頃は、チャート・ミュージック、ボブ・ディランらのフォーク・リバイバル、そしてなによりビートルズらイギリス勢の音楽に飲まれて、たしかにアメリカ産のロックは途切れていたように見えます。

ロックンロールのブームが去り、ブリティッシュ・ウインヴェイジョンの嵐がアメリカを席巻した頃、アメリカからついに登場したロック・バンドがバーズでした。ロジャー・マッギンを中心に結成され、50年代フォーク・リバイバルの中心にいたピート・シーガーやボブ・ディランのカバーをビート・ロック調にアレンジして演奏していましたが、そこからサイケデリック・ロック色、さらにはカントリー色を強めてアメリカ色を強く打ち出すようになっていき、ロックオンロール以降に登場したアメリカのロックのルーツともいうべき存在となりました。

今回は、バーズの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■Mr. Tambourine Man (Columbia, 1965)

バーズのデビュー・アルバムです。前年にビートルズやローリング・ストーンズのデビューが続き、アメリカにブリティッシュ・ビートの旋風が巻き起こった年でした。そんな中、ようやくアメリカからの反撃となったのが、バーズのデビューでした。

ボブ・ディランのナンバーなどのアメリカン・フォークを多く取りあげています。しかし実際の音楽はビートルズからの影響を強く感じさせるビート・ロックで、収録曲もスローナンバーはなく、徹底したビート・ミュージックに仕上げていました。ここから、ロックンロールではないアメリカのロックが頭を持ち上げる事になります。

■Turn! Turn! Turn! (Columbia, 1965)

「フォーク・ロックという言葉はバーズの音楽を指すために作られた」という説があります。たしかに、ファースト・アルバムでのバーズはボブ・ディランやピート・シーガーといったフォーク・リバイバルのミュージシャンの曲を取り上げていましたが、演奏やアレンジはブリティッシュ・ビートの焼き直しでした。それが演奏やアレンジ面でもフォークとロックの融合させた真正フォーク・ロックとなったのが、本作の価値だと思います。

イギリス音楽の焼き直しにせず、オリジナルを示すという意識がどれぐらいあったのか分かりませんが、少なくともアメリカのアーリータイム・ミュージックの名曲「おおスザンナ」を取り上げたのは、アメリカ文化の復興運動としてあったフォーク・リバイバルと連動したものに見えます。フォーク・リバイバルの張縦のひとりだったピート・シーガー作「Turn! Turn! Turn!」もやはりそうです。この曲など、今ではバーズのバージョンの方が知られているのではないかと思えるほど、見事なコーラスを聴かせる完成度です。

何より、初期バーズのメイン作曲家であったジーン・クラークの作曲が冴えます。彼の曲によって、常に全員でのコーラスとビート・ミュージックという一辺倒だったバーズの音楽に、フォークらしい主旋律の強調されたヴォーカルと、要素でのみそれを支えるコーラスというフォーク・ロック的な音楽が生まれました。フォーク・ロック時代の作品としてはデビュー・レコードが取り上げられることが多いですが、音楽的にはこれこそフォーク・ロック期のバーズの代表作だと思います。

■Fifth Dimension (Columbia, 1966)

 フォーク・ロックがバーズから生まれたように、最初のサイケデリック・ロックもバーズが生み出したと言われています。それがこのレコードです。

実際にはアルバム全体がサイケであるわけではなく、前作までのフォークとビート・ロックのフュージョンといった音楽性を踏襲した内容が多くを占めます。その中で、アルバム最後を飾る「2-4-2 Fox Trot」はこのアルバムのサイケデリックさを物語る曲でした。飛行機のコクピットでの無線と音楽が最初から最後まで並列に流れるのがこの曲。今ではそこまで珍しいものではないでしょうが、ロックもソウルもポップスも1曲3分のアメリカン・ソングフォームであった時代に、これはロックやチャート音楽の前提条件を根底から覆したものでした。

そして、曲自体が実に素晴らしいながら、詞がドラッグを表現しているとして放送禁止の憂き目を見た「Eight Miles High」も、バーズの代表的なサイケ曲。サイケ期バーズの代表作のひとつであり、サイケ初のレコードとして、ロックファン必聴のレコードです。

■The Notorious Byrd Brothers (Columbia, 1968)

サイケ時代のバーズの代表的な作品として、もうひとつ挙げたいのがこのレコードです。映画『イージー・ライダー』で流れていた、フランジャーを使った強烈なジェットサウンドが印象的だった「Wasn’t Born To Follow」は、このアルバムに収録されています。

曲がシームレスに繋がり、そこかしこにエフェクターによるサイケデリックな仕掛けが施され、曲もスコットランドのバグパイプ・ミュージックやデイブ・ブルーベックのテイク・ファイブから引用しただろうジャズ調など多彩。そんなアルバムなので、ビートルズ『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』やローリング。ストーンズ『Their Satanic Majesties Request』のバーズ版のように聴こえます。音楽全体の表情はおだやかでレイドバックしたアメリカン・アーリータイム調の印象を受けますが、細かい仕掛けが多いだけに、聴くたびに発見があって噛めば噛むほど味が出るアルバム。これをバーズ最高傑作とする人も少なくないレコードです。

■Sweetheart of the Rodeo (Columbia, 1968)

カントリー・ロック色を強めたアルバムです。ちなみに、カントリー・ロックという言葉の浸透はこのアルバムからという説があります。フォーク・ロック、サイケ、そしてカントリー・ロックでも、バーズがパイオニアだったわけです。

カントリー・ロック色を強めたキーマンは、このレコードから参加したグラム・パーソンズ。ザ・バンドにも、カントリー色を強めた時代のグレイトフル・デッドにも参加したギタリスト/キーボーディストです。このアルバムには、カントリー・ロックどころかカントリーそのものと思える曲が多く収録されています。フィドルとバンジョー伴奏の「I Am A Pilgrim」などにロック色は皆無、素晴らしいレイドバック感を味わえます。この落ち着いた音楽の味わいは、聴かないとなかなか分からないかも知れません。

ちなみに私は、このアルバムとニッティー・グリッティー・ダート・バンドの音楽から、カントリー音楽に目覚めました。一般論からは程遠いかも知れませんが、私が一番好きなバーズのレコードはこれです。

■(Untitled) (Columbia, 1970)

 1枚はライブ、1枚はスタジオ録音という、バーズの集大成のような2枚組レコードです。ライブはかつてのヒット曲を幾つも取り上げている事もあり、ビート・ミュージック時代を彷彿とさせるもの。一方のスタジオ録音は、前作からのカントリー路線を引き継いだものです。

このレコードの注目は、今までゲスト・ミュージシャン扱いであったギターのクラレンス・ホワイトを正式メンバーに迎え入れた点でしょう。ホワイトはストリング・ベンダーというベンド装置をつけたギターを使用する事で有名な、ブルーグラス/カントリー系のセッション・ミュージシャン。演奏のレベルが格違いです。アドリブですら彼がギターを弾くと対旋律がつけられ、曲に抑揚が生まれ、途端にアンサンブルするようになります。スタジオ録音の方は、すでに初期イーグルス級の音楽を完成させていますが、それはクラレンス・ホワイトの参加あってのものだったでしょう。

■レコード高価買取に関するあれこれ

世界初のサイケデリック・ロックとなった『Fifth Dimension』は、66年のオリジナルUS盤も、同年発売のUK盤もモノとステレオがあります。66年ものはUSもUKも人気がありますが、ステレオの方が値をつけやすいようです。サイケデリックの音響効果を求めるが故かも知れません。なお、日本盤は70年盤が初登場ですが、これは帯が上から被さる形で、帯つき美品は高額になる事があります。

『The Notorious Byrd Brothers』のオリジナルUS盤も、モノとステレオが存在します。状態によって評価が大きく変わるようですが、状態が良いと海外では1万円超えもある状態です。

もし、バーズのレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。思わぬ高額買取りレコードになるかもしれません。

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