客席に動物の死体を投げつけるなどの過激なパフォーマンスで注目を集め、80年代前半を風靡したパンクロック・バンドが、ザ・スターリンです。

メジャー・デビュー以前からその過激なステージ・パフォーマンスが話題となり、それが週刊誌などでも取り上げられたために、ザ・スターリンは音楽以外の側面から眺められがちですが、実際には演奏に優れたロックバンドでした。同じパンクでも、ニューヨーク・パンクやロンドン・パンクのような従来のシンプルなロックンロールだけではなく、英米のアンダーグラウンド・シーンで勃興してきたテクニカルでも過激でもあるハードコア・パンクの要素も取りこんだサウンドは強烈。パンクのみならず日本のノイズ・ミュージックの源流になったシーン形成にも一役買ったバンドでした。

今回は、ザ・スターリンの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただきます。

■trash (ポリティカルレコード, 1981)

インディーズのポリティカルレコードからリリースされた、数量限定生産のレコードです。ポリティカルレコードはザ・スターリンの自主製作レーベルであり、これが彼らの初アルバムとなりました。

このアルバムの意味も魅力も、衝撃音と破裂音が交錯する過激きわまるサウンドが爆発する最初の5秒に要約されているのではないでしょうか。ハードな音楽と思われがちなロックですが、ここまでノイズや非楽音といった要素が音楽自体の中核を占める特徴となったものは、ロックではノイズやハードコアの登場までなかったのではないかと思います。

ニューヨーク・パンクやロンドン・パンクに通じるシンプルなロックンロールを演奏しつつ、ギターのタムやドラムの乾純を要した時代のザ・スターリンの演奏能力は、ラモーンズやセックス・ピストルズを超えています。そのノイズに近いサウンドや極度に速く短く凝縮された楽曲、そしてそれを可能とする演奏能力は、恐らくノイズやハードコアの影響を受けたものでしょう。作曲や演奏から察するに、王道パンクの要素をバンドに持ち込んだのがヴォーカルの遠藤ミチロウであり、ハードコアという左派前衛の要素を持ち込んだのはギターのタムだったのでしょう。シンプルなロックンロールと加速するアヴァンギャルドの拮抗が、音楽面から見たザ・スターリンの本質だったのではないかと思います。

■STOP JAP (徳間ジャパン/クライマックス, 1982)

セカンド・アルバムであり、本作でザ・スターリンのメジャー・デビューを果たす事になりました。

ザ・スターリンの音楽を、NY/ロンドン・パンクとハードコアの拮抗、あるいは遠藤ミチロウとタムの音楽性の拮抗と見るなら、そのパワーバランスの変化は最初の3枚のアルバムに反映されています。初期3枚のアルバムで言えば、本作はロンドン・パンクに近いシンプルなロックンロールにもっとも近づいたアルバムです。ほかならぬ遠藤ミチロウ自身も、敢えてそうしたと発言しています。それでも、松田聖子や近藤真彦といったアイドル歌謡がチャートを占拠するようになった82年という日本のヴォーカル・ミュージック・シーンを、外側から食い破り、音楽自体を問い直すほどのインパクトに溢れたレコードであったことに変わりはないでしょう。

■虫 (徳間ジャパン/クライマックス, 1983)

 『STOP JAP』がもっともロンドン・パンクに近づいた作品であったとすれば、本作はもっともハードコアに接近した作品です。音楽面で言えば最も高度なことをやってのけたアルバムで、個人的には本作をザ・スターリンの最高傑作として推したいです。

音楽面では、オーケストレーションのほとんどをひとりで創り出しているギターのタムの活躍が目立ちます。アメリカのブラック・フラッグやイギリスのディスチャージに比肩する不穏さと迫力を持つ演奏を聴かせるギターを聴くだけでも、このレコードは価値があるでしょう。タムはこのレコードでザ・スターリンを離れる事になりますが、ADK レコードを立ち上げ、奇形児やあぶらだこといったバンドの作品をプロデュースし、のちに世界中にファンを生む事となった80~90年代の日本のインディーズ・シーンを生み出した重要な役割を果たしました。

■Fish Inn (B.Q, 1984)

パンクロックと言っても幅は広いですが、80年代までのパンクロックを単純化して分類すると、プロトパンク(パンクの源流となったもの)、ニューヨーク・パンク、ロンドン・パンク、ニューウェイブ、そして80年代に勃興したハードコア・パンク、こうまとめることが出来るかと思います。こうした歴史の中で遠藤ミチロウが辿ったのは、パンクの中心ともいえるNY/ロンドン・パンクと、それが流れた先のニューウェイブという流れだったのでしょう。ザ・スターリン最終作となったこのレコードは、音楽面での左派であったタムが抜け、残った遠藤がポスト・パンクであるニューウェイブ色を強めた内容となりました。

ちなみに、ザ・スターリンは85年の解体後も、リーダーでヴォーカリストの遠藤ミチロウが中心となって、ビデオスターリン(87-88年)、スターリン(89-92年)と、バンド名を変えながら活動を続けました。

■レコード高価買取に関するあれこれ

プレミアという観点から言えば、3000枚限定制作であった『trash』が筆頭。81年の限定盤は見かけること自体が困難、入手できたとしても10万円を上回る事もざらにある状態です。

なお『trash』はあまりのプレミアぶりに、海賊盤もリリースされる状態になりました。有名なのは1997年にドイツからリリースされたものですが、レーベル名が「Nagasaki Nightmare Records」となっているので、見分けるのは容易です。

そして、遠藤ミチロウが逝去した翌2020年に、ようやく『trash』が復刻される事になりました。これはCDもLPも制作されましたが、LPは即完売状態となり、すでに1万円以下での入手は難しい状態となっています。ちなみに、このリイシューは盤起こしのようで、CDですらチリパチ音が収録されていました。つまりマスターテープが残っていないという事であって、81年オリジナル盤の価値は今後も下がる事はないでしょう。

もし、ザ・スターリンのレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。思わぬ高額買取りレコードになるかもしれません。

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