今回は遊び心で、ロック雑誌などでよく企画されている「無人島に持っていくレコード・アルバム3選」を当サイトでも企画してみました。音楽好きなら誰だって飛びつきたいお題ですが、3枚で収まるはずもありません。でも書きたいレコード盤はたくさん。当サイトのファンの方は必見です。

そこで知恵を振り絞り、「ジャンル別3選ではどうでしょう」との企画をさらに細かく、ジャンルを17に細分化、それぞれアルバム3枚を選ぶことで、51枚をご紹介させていただきました。文字数もありますので、早速いきます!読者の皆様も楽しんでいただけると嬉しく思います。

■ロックンロール・レコード/50’s 編

・Eddie Cochran / Eddie Cochran (Liberty, 1960)

・Little Richard / Here’s Little Richard (Specialty, 1957)

・Elvis Presley / The King of Rock’n Roll –The Complete 50’s Masters- (RCA, 1992)

50年代ロックンロールのシンプルさがもたらす爽快さ、そしてヴォーカルの熱さは格別。特にヴォーカルはロック史に類を見ないほど強力で、演奏・作曲・録音などがまだ追いつかない段階の音楽にありながら、それらすべてを帳消しにする強力な名シンガーを多数生み出したジャンルでもありました。プレスリーとリトル・リチャードはその代表格、文句なしでしょう。エディ・コクランはロック界のジェームス・ディーンとでも呼びたくなる不良らしさがたまりません。ロックに「若者みずから発する文化」という側面を与えたようにも感じます。

■60’s ブリティッシュ・ビート・レコード編

・Them / The “Angry” Young Them! (Decca, 1965)

・Kinks / Kinks (Pye, 1964)

・The Who / My Generation (Brunswick, 1965)

ビートルズやローリング・ストーンズによって一躍大ブームを起こしたブリティッシュ・ビートのレコードですが、現代イギリスの軽音楽の黎明期とあって演奏が弱かった事も確か。それが、ものの1~2年で彼らをはるかに凌駕する演奏技術を持ったバンドやレコードが登場。特にこの3枚のレコードは、ビートルズ時代の音楽を食わず嫌いの人でもぶっ飛ぶのではないかと思います。レコード買取もこの辺りはかなりかと。

■フォーク・ロック/カントリー・ロック・レコード編

・Bob Dylan / The Times They Are A-Changin’ (Columbia, 1964)

・Buffalo Springfield / Buffalo Springfield Again (ATCO, 1967)

・Magna Carta / Seasons (Vertigo, 1970)

ブリティッシュ・ビートで割を食ったのが、50年代末にリバイバルしたフォーク、そして根強い人気のあったカントリーでした。これらがロックと融合、とくに詞の面での深さはさすがです。せっかくなので、アメリカだけでなくブリティッシュ・トラッド方面も1枚選んでしまいました。この時代にフォークで組曲ですよ、すごいと思いませんか?!

■ブルース・ロック・レコード編

・Johnny Winter / Johnny Winter (Columbia, 1969)

・Free / Tons Of Sobs (Islands, 1969)

・John Mayall / The Blues Alone (Ace Of Clubs, 1967)

楽曲や勢いで押してきたロックが、演奏表現の域で音楽を作れるようになったのは、ブルース・ロックによるところが大きかったのではないでしょうか。ジョニー・ウインターには『Nothin’ But The Blues』というものすごいレコードもありますが、あれはほとんどマディ・ウォーターズのバンドなので、ブルース・ロックというよりもシカゴ・ブルースそのもの、よって選外。フリーはポール・コゾフのギターに悶えます。選外ですが、クリーム『Live』やマイク・ブルームフィールドも…やはり3枚では足りませんね。

■サイケデリック・ロック・レコード編

・Gods / The Third Testament (ESP, 1968)

・The Doors / The Doors (Elektra, 1967)

・Quicksilver Messenger Service / Happy Trails (Capitol, 1969)

西洋の軽音楽全盛となった戦後ですが、その頃のクラシックやジャズといえばレベル違い。しょせん長調か短調かブルースしかないドミソの音楽なんて子供だましです。やり方が粗暴であったにせよ、そんなロックの音楽面での安さを内側から食い破ったという側面が、サイケにはあったのではないでしょうか。ゴッズはあまり聴かれていないかも知れませんが強烈、未体験の方はぜひ!レコード買取もこの辺りはコレクター多めです。

■アート・ロック・レコード編

・The Jimi Hendrix Experience / Are You Experienced (Reprise, 1967)

・Pink Floyd / A Saucerful Of Secrets (Columbia, 1968)

・Deep Purple / The Shades Of Deep Purple

ロックでもっとも独創力ある音楽は何だったのか。僕ならこのあたりと答えたいです。プログレは?あれは他ジャンルからの応用が多いですからね。ディープ・パープルはハード・ロック期よりアート・ロック期、ピンク・フロイドもプログレ以降よりその前の方が凄かった、この事は声を大にして言っておきたいです(異論は認めます)。レコード買取はこのあたりは重要。

■ガレージ/初期パンク・ロック・レコード編

・The Velvet Underground / White Light/White Heat (Verve, 1968)

・The Sonics / Here Are The Sonics!!! (Etiquette, 1965)

・MC5 / Kick Out The Jams (Elektra, 1969)

馬鹿テクのクラシックにも、アドリブ至上主義のジャズにも、うまいのに安全圏で演奏されているがために面白くない演奏が普通にあります。技術はそうでもないのに、そういう所を軽々と越えて危険水域に簡単に踏み込むヤバさ、これがアメリカのガレージ・ロックがうまくいった時の凄さ、そう信じて疑いません。ロックはぶっ壊しです。

■ハード・ロック・レコード編

・Mountain / Nantucket Sleighride (Windfall, 1970)

・Grand Funk / Live Album (Capitol, 1970)

・Led Zeppelin / Led Zeppelin III (Atlantic, 1970)

もっともロックらしいロックといえば、ハード・ロックではないでしょうか。なにせ速くて音圧がありますからね。ところが初期ハード・ロックは意外にも見事な構成力を持ったものが多く、70年代中期以降に量産された産業ロックとはレベルが違います。

■アシッド・ロック・レコード編

・Ash Ra Tempel / Ash Ra Tempel (Ohr, 1971)

・Guru Guru / UFO (Ohr, 1970)

・The Fugs / The Fugs (ESP, 1966)

クラウト・ロックと呼ばれるドイツのドラッグ・ミュージックの暗く熱いヤバさは、文化差だけでなく植物系を好んだ合衆国とはドラッグの種類自体が違ったのかも知れません。鉱物系はヤバい、一生あっちから帰ってこれないかも知れず、命に関わります。というわけで、やはりアシッド系を選ぶとドイツ優勢。ただしアメリカのアングラ音楽を探ると、これがまたすごい…というわけで、アメリカからも1枚。

■プログレッシヴ・ロック・レコード編

・Area / Concerto Teatro Uomo (Cramps, 1996)

・King Crimson / The Great Deceiver (Live 1973 – 1974) (Discipline, 1992)

・Tangerine Dream / Alpha Centauri (Ohr, 1971)

指先でチョロチョロやってるだけの音楽なんて面白くないです。そういうテクニックは凄まじい音楽に従事してこそ価値があります。この中ではアレアのライヴ盤はあまり聴かれていないかも知れませんが、ぜひ一度聴いてみて欲しいです。

■ジャズ・ロック・レコード編

・Soft Machine / 5 (CBS, 1972)

・Keith Tippett’s Ark / Frames (Ogun, 1978)

・Graham Collier Music / Portraits (Saydiscv, 1973)

イギリスはジャズが土着文化としての意味を持っておらず、純粋に即興演奏のメソッドという面だけで受け取りやすいから、容易に他の音楽、たとえばロック、と繋げやすいのかも知れません。ロックやジャズといった狭い枠を離れてもレベルが高いと感じるロックがここにあります。

■サザン・ロック/スワンプ・ロック・レコード編

・Z Z Top / Rio Grande Mud (London, 1972)

・The Allman Brothers Band / Brothers And Sisters (Capricorn, 1973)

・Stevie Ray Vaughan And Double Trouble / Couldn’t Stand The Weather (Epic, 1984)

洗練され、モノにも金にも恵まれた都会に対する田舎の対抗心や根性が馬鹿に出来ない事は、高校野球を見ても第2次世界大戦を見ても、よく分かります。対抗馬が強いのです。泥臭いが実は馬鹿テク、そしてひ弱さのかけらもない田舎の強さ、それがアメリカ南部のロック最大の魅力ではないでしょうか。そうそう、ZZトップは初期に限るので、デジタル・ドラム以降しか知らない方はぜひ聴いて欲しいです。ギターもドラムも、そのへんのプログレ・バンドではかなわないほどのテクニック、しかも指先チョロチョロではなくガツンと熱い!

■ポップ・ロック・レコード編

・The Beach Boys / Summer Days (And Summer Nights!!) (Capitol, 1965)

・Carpenters / Now & Then (A&M, 1973)

・Elton John / Elton John (DJM, 1970)

演奏家がメインとなって発展したロックの弱みは、作編曲面の弱さ。それに対するポップ・ロックの強みのひとつは、この作編曲面の能力の高さではないでしょうか。グランド・ファンクやオールマン・ブラザーズ・バンドに「カリフォルニア・ガールズ」が作曲できたとは思えません。次点で、ブレッド、バッド・フィンガー、ナッズあたりのアルバムも。

■クロスオーヴァー/フュージョン・レコード編

・Mahavishnu Orchestra / Between Nothingness & Eternity (Columbia, 1973)

・Jeff Beck / There & Back (Epic, 1980)

・Santana / Caravanserai (Columbia, 1972)

ウェザー・リポートのようなジャズ文脈で語られることの多いものはここでは除外、ロック的な部分が強く感じるものを選ばせていただきました。細かいテクニックより勢いあるソロ重視、そしてアメリカン・ソングフォームに収まらない作曲能力、ジャズ系のそれにロック系フュージョンが優る部分です。ああカッコいい。

■AOR・レコード編

・Isabelle Antena / Les Derniers Guerriers Romantiques (Les Disques Du Crépuscule, 1991)

・Boz Scaggs / Silk Degrees (Columbia, 1976)

・The Doobie Brothers / Livin’ On The Fault Line (Warner, 1977)

1枚だけフレンチ・ポップスのレコードを混ぜてしまいましたが、AORを語るにアンテナのこのレコードは外したくありません。AOR の素晴らしさは、作編曲や詞のレベルだけでなく、文化として大人の生活の中に食い込むことのできる戦後の軽音楽、これをジャズなどではなくロック/ポップスの中から生み出した所が素晴らしいです。ジャズがどんどん演奏技術に走る中、歌を大人の音楽の中に復活させたわけですから。

■アヴァンギャルド・レコード編

・The Mothers Of Invention / Burnt Weeny Sandwich (Bizzarre, 1970)

・Exias-J Electric Conception / Avant-Garde (P.S.F, 2003)

・Senyawa / Acaraki (自主制作, 2014)

この分野はデタラメやインチキも目白押し、さらに難解さが付きまとうので、人を選ぶジャンルかも知れません。しかし当たりを掴んだらロック最強、HR/HM もプログレも温くて聴いていられなくなるほど強烈です。このジャンルが強いのは、ロシア、日本、インドネシアなのですよね。日本のExias-J は、メンバーがジャズやクラシックにも通じた人揃い。インドネシアのセンヤワは民俗音楽と尖ったロックの融合がすさまじく、これもやはり達人技。狂気じみたサウンドだって、それを表現するのは技術という事かも知れません。

■レコード高価買取に関するあれこれ

今回は純粋に音楽面からレコードをピックアップしたもので、中古レコードとして高く評価されているものもいないものも混在しています。それでも、まったく忖度なしに僕が「これだ!」と選んだ以上、同じように感じる人が一人もいないはずもなく、供給過剰になったものでさえなければ、たいがいは一定の評価を受けたものが多いと思います。ガレージやアメリカン・サイケなどはジャンル自体が売れ選ではないため、商品知識のあるなしで、評価が大きく変わるかも知れません。

もし、これらのレコードを譲ろうとお考えでしたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。思わぬ高額買取りレコードがあらわれるかもしれません。