デヴィッド・ボウイは、時代によって作風を変えていったロック・ミュージシャンで、67年発表のデビュー・アルバムはポップスにブリティッシュ・トラッド風味を加えたフォーク調、70年代後半はブライアン・イーノと組んで前衛性を秘めたロックを聴かせました。そんなデヴィッド・ボウイがもっとも輝いた時期と言えば、グラムロック路線を行った70年代前半ではないでしょうか。

グラムロック時代のデヴィッド・ボウイの代表作を挙げるなら、『ジギー・スターダスト』か『ハンキー・ドリー』のどちらかになるでしょうが、実はこのふたつのレコードは同時進行で制作されたものです。

■物語が軸となるロック

デビューから70年代半ばまでのデヴィッド・ボウイの音楽の特徴のひとつは、物語が軸となっていること。ボウイの物語というとコンセプト・アルバム『ジギー・スターダスト』が思い浮かぶかもしれませんが、実はブリティッシュ・フォーク調だったデビュー・レコードの時からこの傾向がありました。

本作でも、曲のすべてが歌メロディを中心にホモフォニー。時として曲がいびつになるのも、オケが楽器間でポリフォニーやポリリズムを作り出す事がなく、常に歌メロに対するコードまたはオブリガートとなるのも、メロディとコードだけが作曲されているからでしょう。それほど、ボウイの音楽は最初に言葉を語るメロディが重要視されています。

ボウイのレコードにコンセプト色の強いものが多い事も、また彼が俳優の道にも進んだことも、物語を語るという点で一貫しているのかも知れませんね。

■グラムロックなるものの音楽的な骨格の確立

70年代を風靡したイギリスのグラムロックは、女装やメイクなどのビジュアル面から区分けされた面の強いジャンルでした。それでも、グラムロック的と感じる音はたしかにあって、このレコードはその典型。鍵は、ギタリストのミック・ロンソンが作るバンド・アレンジなのかも知れません。ミック・ロンソンはこのレコードに参加し、ギターのみならず5曲のアレンジを担当しています。

彼はボウイのレコードのほか、グラムロックを代表するバンドのひとつであるモット・ザ・フープルにも参加しており、これにTレックスを加えればグラムロックの骨格が出来ます。ひとつのジャンルでここまで幅を利かせていたら、ミック・ロンソンの作るサウンドがそのままグラムロックと感じたとしても不思議はありません。

グラムロック期のボウイの代表作と問われて、『ジギー・スターダスト』ではなく本作を挙げたくなるのも、アルバム全体の劇性より、ミック・ロンソンの作る曲ごとのアレンジによるのかも知れません。

■レコード高価買取に関するあれこれ

このレコードのUKオリジナル盤には、スリーヴがラミネート加工されているものがあります。これが超のつくプレミアで、数万円の値をつけて当たり前、海外では10万円超えとなる事もあります。

また、72年が初回プレスとなった日本盤も、帯つき(黒地に赤文字)で状態が良いと1万円超えもある状態で、海外では2万円超えとなる事もあります。

そして、1990年にRyko からリリースされた2枚組は、盤面がクリア(少し緑がかった透明)で、これも高額をつける事があります。値段に関わらず、この2枚組は装丁が見事です。 もし、デヴィッド・ボウイのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。