名は知られているものの残されたレコードが少なく、幻のミュージシャンと化していた高木元輝。ところが2021年に海外でLPレコードが、日本でも未発表音源が5枚組CDを含め次々にリリースされ、再評価の気運が高まっています。

日本で最初にフリージャズを演奏したのは吉沢元治トリオ(高柳昌行の証言)、最初のレコードは恐らく富樫雅彦『ウィ・ナウ・クリエイト』(1969年)です。そのどちらにも参加していたサクソフォニストが高木元輝で、日本のフリージャズ創世期からその中心にいる重要人物でした。初期の日本人フリージャズは、高木元輝、富樫雅彦、高柳昌行、吉沢元治らを中核とした小さな音楽コミューンの中で一気にその音楽が至るべき頂点へと駆け上り、日本のジャズの歴史に残る作品を次々に生み出しました。そこには常に、高木の奏でる高速かつ豪放な笛とサックスの音が鳴り響いていました。

今回は、そんな高木がフリージャズの世界で頭角をあらわした69年に録音された初期の傑作『アイソレーション』をご紹介させていただきます。

■安保闘争に連続射殺魔、揺れ動く1969年の日本の心象風景を見事に音楽化

69年といえば70年安保闘争と学生運動の激化した年で、日本は大きく揺れ動いていました。そんな不安定な時代を象徴する事件のひとつに、永山則夫による連続射殺事件がありました。この事件を題材にした前提的なドキュメンタリー映画の制作が企てられ、そのサウンド・トラックは富樫雅彦と高木元彦のデュオによって録音されました。レコード『アイソレーション』はこの録音を編集して作られたものです。

即興による演奏ですが、演奏にはテーマが設けられていました。射殺を強行する八方破れな心理を表現するもの、北海道で育った犯人が本来持っていただろう心象風景などがそれで、そうした心理を描き出す音楽は壮観。またそれをサウンド・トラック特有のサウンド・イメージに終わらせず、編集によってドラマチックな劇的構造を与えた所も素晴らしいです。

■レコード高価買取に関するあれこれ

71年発表の初期盤レコードはゲートフォールド(見開き)使用、日本コロムビアの赤ラベルが特徴です。数万円がつく超プレミア状態です。黒ラベルとなる76年の再発盤も初期盤ほどではないにせよやはりプレミア状態で、1万円に迫る値をつける事があります。このレコードのリリースはこの2回だけで、再評価の機運高まる高木元輝が残した数少ないアルバムのひとつでもあり、今後さらに高額化するかもしれません。

もし、高木元輝のレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。