ロックンロールをはじめとしたアメリカン・フィフティーズがイギリスの音楽シーンを刺激した50年代が過ぎて60年代に入ると、今度はビートルズをはじめとしたブリティッシュ・インベイジョンの波がアメリカに吹き荒れました。こうした動きを受け、アメリカを席巻していたフォーク・リバイバルのシーンの中からロック・バンドの形式をとってデビューするバンドが増えました。65年デビューのバーズ、66年デビューのバッファロー・スプリングフィールドやジェファーソン・エアプレインはその典型でした。これらのバンドはフォークロックに留まることなく、次第にサイケデリックの色を強め、60年代後半のアメリカで大きなムーヴメントを作り上げました。そしてサイケの名盤として登場したのが、67年にジェファーソン・エアプレインが発表したセカンド・アルバム『シュールリアリスティック・ピロー』でした。

 今回は、ジェファーソン・エアプレイン最大のヒット・レコード『シュールリアリスティック・ピロー』をご紹介させていただきます。

■バンドブーム、フォーク・リバイバル、ヒッピー、そしてサイケの交錯点

ジェファーソン・エアプレインのファースト・アルバム『Jefferson Airplane Takes Off』は、詞はともかく音楽面では実にピュアなフォークロックで、サイケのかけらも感じられるものではありませんでした。

 そんな彼らがサウンド面でもサイケ色を強めたのが、このセカンド・アルバムでした。サイケとはLSDなどで生じる幻覚や浮遊感の視覚・聴覚的な表現を指す言葉ですが、過剰にかけられたリヴァーブ、階段を上がるように徐々に高揚していく独特な曲想(White Rabbit)など、随所に60年代サイケデリック・ロックのどろどろとした質感が蠢いています。

■ホワイト・ラビットのダブルミーニング

示唆に富み修辞法に優れる詞は、60年代のジェファーソン・エアプレインの大きな魅力です。それは、アメリカを席巻したフォーク・リバイバルでもまれてきたメンバーたちが得た大きな武器ではないでしょうか。その最大の成果が、このアルバムからメンバーになった女性ヴォーカリストのグレイス・スリックが書いた「ホワイト・ラビット」ではないでしょうか。

「不思議の国のアリス」をベースにしたこの詞は、字義通りに受け取ればストーリーをなぞっているだけにも思えます。しかし「もし兎を追いかければ、あなたは落ちていく」といった詞が別の意味を持っている(あるいは持ちうる)事は歴然としています。

60年代のジェファーソン・エアプレインを楽しむなら、詞に注目すると一層深く楽しめるでしょう。

■レコード高価買取に関するあれこれ

先に、ファースト・アルバム『Jefferson Airplane Takes Off』の話を。セックスやドラッグを示唆する詞が問題となり、詞の差し替えや曲の削除が繰り返されて再プレスに至ったため、差し替え前の12曲入りファースト・プレス盤は10万円を超える大プレミアとなっています。

『Surrealistic Pillow』は、初期盤はステレオとモノの2種類が出ています。さすがにUSゴールド・アルバムだけあって、ファーストのようなレア度はありませんが、間違いなく人気作。相場はどのバージョンも3000円以上。中でも67年日本盤はゲートフォールド仕様でジャケット裏面のデザインが異なっており、高額で取引されています。

もし、ジェファーソン・エアプレインのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。