2021年11月1日、ジャズ・ギタリストのパット・マルティーノが逝去しました。パット・マルティーノは、生涯を通じて単旋律での高速アドリブを身上としたギタリストで、クラブ・ジャズを演奏していた時代も、インド音楽に傾倒した時代も、その信念が変わる事はありませんでした。

そんなパット・マルティーノが、ついに全編を通してソロ・アドリブを弾き倒したのが、アルバム『Live!』でした。今回は、72年発表、パット・マルティーノ初のライヴ・レコード『ライヴ!』を取り上げさせていただきます。

■ついに登場したアドリブの鬼によるギター弾き倒しライヴ!

パット・マルティーノのみならず、プレイヤー全員が見事なライブ盤です。驚くほどのリズム感をもって16分音符を弾き倒しているパット・マルティーノの演奏に耳を奪われるのも当然ですが、70年代のパット・マルティーノの音楽は、他の時代の彼の音楽ではあまり聴く事の出来ない工夫が施された時期でもありました。

■アドリブだけじゃない!生涯随一のジャズ・アンサンブルを聴かせた70年代マルティーノ

17分を超える「Special Door」が聴き飽きないのは、それが素晴らしい集中力を持つ演奏であるからだけではなく、楽曲のさまざまな所に工夫が施されているからではないでしょうか。テーマが終わるや否や無調で小節線のないパートに突入。混沌とした中からビートが浮き上がってイン・テンポのフォービートに戻ると、そこからはあふれんばかりの驚異のギター・インプロヴィゼーション。ソロ・オーダー2番手となるエレクトリック・ピアノのパートは一転して無伴奏のルバート、ギターのコーラスと見事なコントラストを生み出します。

アドリブ・プレイにどうしても耳を奪われるパット・マルティーノの音楽ですが、70年代は楽曲やアンサンブル面での工夫が実は素晴らしい時期でもありました。

■レコード高価買取に関するあれこれ

67年にジャズの名門プレスティッジからデビューしたパット・マルティーノですが、72年発表のこのレコードからミューズに移籍しています。96年まで続いたミューズ時代は間違いなくパット・マルティーノ全盛期ですが、プレスティッジや、以降移籍した新生ブルーノートに比べるとディストリビューションの弱いマイナーレーベルであったため、レコードの流通量は決して多いとは言えない状態です。

 LPレコードはUS盤と日本盤の2種類しかなく、US盤と日本盤で人気差があるというより、状態によって価格差がつく事が多いようです。このレコードはどういうわけか昔から状態の良いものが少ない印象ですが(黒地デザインなので、ジャケットにレコード跡などが目立つためかもしれません)、良いものとなるとUS盤/日本盤に関わらずなかなかの値段がつく事が多いです。

LPレコードではありませんが、98年に日本のソニーが施したDSDリマスタリングCDは驚異の音質で、個人的にはパット・マルティーノ全レコードの中でこのCDがもっとも高音質と思っています。ドラムを右に配置した定位もセンスあふれるものでした。

もし、パット・マルティーノのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。