ポール・ブレイは、時代や参加ユニットなどによって音楽性を色々と変化させてきたジャズ・ピアニストです。チャールズ・ミンガスとアート・ブレイキーという超大物がバックを務めた1953年のデビュー・レコード『Introducing Paul Bley』では、正統派バップを演奏。カーラ・ブレイやアーネット・ピーコックの楽曲などを取り上げた60年代前半は、一転して20世紀前半のクラシックとジャズを止揚したかのような知性あふれる音楽。ECMや日本のレーベルから作品を大量に発表した80年代以降は、古典的と言ってよいほどシンプルな響きのインプロヴィゼーション。そんな複数の顔を持つポール・ブレイですが、その名を一躍有名にしたのは、やはり60年代なかばのフリージャズ期ではないでしょうか。

今回は、フリージャズ期のポール・ブレイを代表するレコードのひとつ『バラッジ』を取り上げさせていただきます。

■ポール・ブレイ生涯屈指の爆発力ある演奏!その実態は…

時代ごとに違う傾向にある音楽を演奏するブレイですが、どの時代にも共通している点があります。作曲作品の演奏は得意ですが作曲自体は得意ではなく、何らかの点で即興を含む音楽を好むこと。即興を含む音楽を演奏し、フリージャズでその名を轟かせながらフリーフォームの即興演奏は実はそれほど得意ではなく、むしろある程度制御された音楽での即興演奏で素晴らしい才能を発揮する、といったあたりではないかと思います。

この傾向は、フリージャズ時代にも当てはまります。本作に並ぶフリージャズ期の人気作『Touching』は自由度の高い音楽ですが、明らかに考えながら演奏しており、音楽が前に進まなくなるほど音が出て来ないのが分かります。後年の即興演奏にも同じ傾向がみられますが、本作はその逆で、バンドとしてもポール・ブレイ個人としても、キャリア・ハイと言ってよいほどの爆発力ある演奏を聴く事が出来ます。

フリージャズの質感あふれる本作ですが、完全なフリーフォームではなく、カーラ・ブレイによる曲がほとんどを占めています。スコアにも強くないと務まらないサン・ラ・アーケストラ系のマーシャル・アレンやデューイ・ジョンソンといったプレイヤーの起用は、楽曲にも即興演奏にも対応するプレイヤーを求めた結果かも知れません。より知性的なレコード『フットルース』やジミー・ジュフリー・トリオの演奏に対し、より野性的な本作ですが、実はどちらも同じ傾向の音楽と言えるのかも知れません。

■レコード高価買取に関するあれこれ

本作はフリージャズでは伝説のレーベルESPからリリースされた作品という事もあり、65年のUSオリジナルは、ステレオ盤もモノ盤もプレミア状態です。とくに黒ジャケット盤はレア度が高く、2万円超えもある超レア状態となっています。

また、70年代以降に復刻されたイタリアや日本盤も、USオリジナルほどではないにせよ人気が高く、初CD化となった93年日本盤(これは赤ジャケットです)も高額です。

もし、ポール・ブレイのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。