レイ・デイヴィスとデイヴ・デイヴィスのデイヴィス兄弟を中心に結成、ビートルズやローリング・ストーンズを生み出した60年代ブリティッシュ・ビートの中心バンドのひとつとして活躍したバンドがキンクスです。デビュー時にはロックンロールやバンド・ポップを3分で演奏する当時のチャート音楽のフォームの中で名曲名演を連発、のちに風刺に富む物語を持つコンセプト・アルバムの名作を発表しました。

今回は、キンクスの代表曲を多数収録したデビュー・アルバム『Kinks』(邦題『ファースト』)を取り上げさせていただきます。

■大名曲「ユー・リアリー・ガット・ミー」だけじゃない!60年代ブリティッシュ・ビート有数の強烈なビート感

はじめてこのアルバムを買った時、私のお目当ては「ユー・リアリー・ガット・ミー」だけでした。ところがアルバムが始まるや、チャック・ベリー曲をはじめ見事なビート感を持つ演奏の連発で、お目当ての曲にたどり着く前に魅了されてしまいました。今では、バンド編成のビート・ミュージックは、ゼムのファーストと本作に尽きると思っているほどです。「ソー・ミスティファング」のイントロのギターリフなど、デビュー時のビートルズでは演奏すら出来なかったのではないでしょうか。それぐらい、演奏に魅せられたレコードでした。

■イギリスでのロック系スタジオ・ミュージシャン結集!アマチュアから脱却していくブリティッシュ・ロックの萌芽

そんな切れ味あふれる演奏の主役はふたり。ひとりはリズム・ギターを担当したキンクスのレイ・デイヴィス、もうひとりはドラムです。ところがこのレコード、ドラマーはノンクレジットです。理由は書けなかったから…半分以上の曲で、ドラムをスタジオ・ミュージシャンのボビー・グラハムが叩いていたのです。デビュー作にしてヤードバーズやアニマルズをすら凌駕する演奏を見せつけた理由の半分は、スタジオ・ミュージシャンの起用だったわけです。

グラハムの他にも、スタジオ・ミュージシャンの起用が見られます。のちにレッド・ツェッペリンを結成したジミー・ペイジ、ディープ・パープルを結成したジョン・ロードなどがそれです。

魅力はあっても作曲も演奏もアマチュアレベルだった60年代初頭のブリティッシュ・ロックですが、これが60年代後半になると格段に進化しました。数年後にロック・シーンの主役になっていくプレイヤーたちは、60年前半にはこうした作品で影武者として既に活躍していたわけですね。

■レコード高価買取に関するあれこれ

なんといってブリティッシュ・ビートを代表するレコードのひとつですから、LPレコードとあればいずれも高額必至の人気です。オリジナルのUK盤はモノとステレオのふたつがありますが、本作の場合はステレオがより人気が高いようで、状態が悪くなければ最低でも1万円越えは当たり前です。

US盤は『You Really Got Me』のタイトルでリリース、同じ写真を使いながらもデザインが違います。収録曲も少ないためか、UK盤ほどの人気はないようです。

注目は1年遅れの65年発表となった日本盤で、『キンクス・サイズ』のタイトルでリリースされました。ジャケットも変更され、US盤とは違って赤を基調とした見事なデザインです。海外ではUKオリジナルを超える値段で取引されるほどの人気で、日本でも4万円に達する事もあります。

もし、キンクスのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。