60年代アメリカのジャズ・シーンを席巻したフリージャズですが、ニューヨークではジョン・コルトレーンを柱のひとつとして発展しました。マリオン・ブラウンはこの潮流の中から頭角をあらわしたひとりで、ジョン・コルトレーンやアーチー・シェップのリーダー・アルバムに参加して注目を集め、一気にNYフリーの中心人物のひとりとなりました。

今回は、1966年リリースのマリオン・ブラウンの初リーダー・アルバム『マリオン・ブラウン・カルテット』を取り上げさせていただきます。

■ジャズ直系のフリーミュージックとして

このレコードに収められた音楽は独特です。典型的なフリージャズのような熱く自由な演奏でありながら、曲はテーマとオープンパートを持つ典型的なジャズフォームであり、ビートもジャズ、演奏にも平然とバップ・イディオムのフレージングが登場します。また、60年代NYフリー的な攻撃的な楽曲や演奏もしながら、Aサイドを占有する「カプリコーン・ムーン」のテーマ・メロディはまるでアメリカのルーツ・ミュージックのような穏やかさです。ジョン・コルトレーンやアーチー・シェップが実現した60年代NYフリーであり、間違いなくビバップの延長にあるモダン・ジャズであり、両者に還元できない独特のルーツ・ミュージック志向まで感じるという、相反するような要素を止揚した奇妙で魅惑的な音楽なのです。

公民権運動やベトナム戦争の泥沼化を背景に、フリージャズを思考した黒人ミュージシャンの多くが社会闘争を背景とした攻撃的な音楽性を示していきました。しかしマリオン・ブラウンはそこで「アフロ・アメリカンとは何か」という所に向かったのかも知れません。マリオン・ブラウンはハワード大学(黒人のハーバード大と言われる名門大学)卒で、その知性があったからこそ、こうした汎アフロ・アメリカン的な音楽の創造や、多角的な視点を持つ音楽を創造できたのでしょう。

■レコード高価買取に関するあれこれ

このレコードをリリースしたESPレーベルは、1960年代にニューヨークで設立されたアヴァンギャルド色の強いレーベルです。カタログはアヴァンギャルド・ロックとフリージャズが大半を占め、ESPレーベルのレコードをすべて収集するコレクターも多い人気です。現在ではESPのレコードというだけでプレミア化する傾向にあり、このレコードも例外ではありません。

66年リリースの米オリジナル盤はステレオ盤とモノ盤の2種類がありますが、どちらも1万円超えが当たり前となっています。ちなみにステレオ盤はレーベルの片面がマリオン・ブラウンのスナップショットとなっており、非常に珍しいです。

USオリジナル以外でも人気の高さは変わらず、UK発売となったフォンタナ盤(ジャケットにアルバム名がレイアウトされています)や75年発表の日本盤も、今では4000~5000円程度で買えるようなら早めに買っておいた方が良いぐらいの状態となっています。70年代までにリリースされたこのレコードは、US盤、UK盤、日本盤ですべてです。

もし、マリオン・ブラウンやESPのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。