サザン・ロックの雄オールマン・ブラザーズ・バンドは、71年発表のレコード『フィルモア・イースト・ライヴ』のブレイクでその名を轟かせましたが、同年にバンドの看板ともいえるギタリストのデュアン・オールマンが事故で他界。翌72年発表『Eat a Peach』はデュアン在籍時の音源を含むレコードで、その死を引きずるものでした。

そんなバンドが見事に再起を果たしたのが、73年発表となるこのレコード『ブラザーズ&シスターズ』で、見事バンド初のビルボード1位に輝く素晴らしい作品となりました。

今回は、デュアン在籍時には出来なかった事を見事になし遂げた名作『The Allman Brothers Band / Brothers and Sisters』を取り上げさせていただきます。

■アンサンブルや転調など、楽曲の完成度が出色

デュアン・オールマンは楽譜を読むことが出来なかったと言われていますが、これは決してデュアンの能力の低さを示すものではなく、70年代までの南部アメリカでは、カントリー、ロック、そしてジャズに至るまで、書き込まれた楽譜を使う習慣があまりありませんでした。

出世作『At Fillmore East』までのオールマン・ブラザーズ・バンドは、ヘッドアレンジによるシンプルでブルース色の強い音楽を演奏していましたが、これは南部のそうした習慣が複雑な楽曲の演奏に向いていなかった面もあったでしょう。結果として複雑なコード進行に縛られない縦横無尽な演奏を引き出しましたが、一方で初期オールマン・ブラザーズ・バンドの楽曲の一本調子さの一因にもなったでしょう。

グレッグ・オールマンを中心に鍵盤2台体制となった『ブラザーズ&シスターズ』は、そうしたバンドの弱点を見事に乗り超えた作品でした。その音からは、それまでのバンドのオリジナル曲になかった見事なスコアを聴きとることが出来ます。「Come and Go Blues」を例にとれば、平歌ではクリシェを使用、間奏パートでは転調、アドリブパートが多い中でもコード・プログレッションで重要なノートはしっかりと記譜されているように聴こえます。他にも優れた楽曲がそろい、作曲面でのバンド最高傑作と言えるのではないでしょうか。

■古き良きアメリカ音楽が持つ明るく大らかな感覚が真の主役?

このレコードのオリジナルUS盤はゲートフォールド仕様で、見開くとバンドメンバーとその家族の集合写真が大きくレイアウトされ、たくさんの笑顔にあふれています。また、このレコードには暗い曲が入っておらず、バンドの代表曲のひとつともいえる収録曲「ジェシカ」もこの例にもれず、大らかでほのぼのした曲想です。そして、アルバムタイトルは「ブラザーズ・アンド・シスターズ」。レコードのあらゆるところから感じられるこうした明るく大らかな傾向は、ブルースを基盤にしたデュアン時代のバンドには見られないものでした。

旧世界の因習を振り払ったパイオニア精神がルーツにあるのか、合衆国は楽観主義な傾向を持っています。ミンストレル・ソングやラグタイムといった古き良きアメリカのルーツ・ミュージックも、そうした美感に従う音楽性を持っています。デュアン・オールマンを失って2年が経過したところでバンドが辿り着いたのは、明るく前を向こうとするこうしたアメリカの美感だったのかも知れません。このレコードの影の主役は、合衆国の音楽が次第に失っていったこの美感自体なのかも知れません。

■レコード高価買取に関するあれこれ

オールマン・ブラザーズ・バンドの演奏の頂点が『フィルモア・イースト・ライヴ』だとすれば、作曲面での頂点はこのアルバムではないでしょうか。このレコードのオリジナルUS盤のラベルはカプリコーン、ジャケットはゲートフォールド仕様です。そこまで高額化はしていないものの、USオリジナルや、UKでもマトリックス1はそれなりの値段がつく事が多いので、高額での買取りも期待できそうです。

もし、オールマン・ブラザーズ・バンドのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。