60年代後半から70年代に興隆を極めた南部アメリカのロックを、サザン・ロックと呼ぶ事があります。ブルース色の強さ、南部ならではの泥臭さや力強さなどが特徴で、数々の名バンドを生みました。そんなサザン・ロックの代表的なバンドがオールマン・ブラザーズ・バンドです。中でも2枚組ライブ・アルバム『フィルモア・イースト・ライヴ』は代表作として知られ、今も多くのファンを魅了し続けています。

今回は、オールマン・ブラザーズ・バンドが残した屈指の名盤『フィルモア・イースト・ライヴ』を取り上げさせていただきます。

■60年代アメリカン・ロック屈指のセッション・ミュージシャン集団

オールマン・ブラザーズ・バンドというと、どうしてもデュアン・オールマンに注目が集まりがちですが、実は全員がレコード・デビューなり大物ミュージシャンのバックバンドを務めるなりといった実績を持つ、名うてのセッション・プレイヤー集団です。たとえば、本作の随所で聴く事の出来るドラムのルーディメンツの正確さとヴァリエーションの多彩さは当時のアメリカのロック・バンドでは出色のレベルで、ニューソウルあたりの名うてのセッション・ドラマーを思わせる水準に達しています。

アメリカのロックは、元々はプレスリーの頃からプロのスタジオ・ミュージシャンが演奏するもので、たいがいはシンプルなリードシート(メロディとコードだけが書かれた簡単な楽譜)に準じたアドリブ・セッション。初見での即興演奏能力が要求されるものでした。それがイギリスのビートルズらによるブリティッシュ・インヴェンションが到来すると、プロ/アマ問わずにバンドが出来、音楽は多様化したものの演奏のレベルは低下。当時のアメリカ屈指のレベルにあるフランク・ザッパのバンドですら、演奏に難が残る状態でした。

そんな中で登場したプロのセッション・ミュージシャン集団がオールマン・ブラザーズ・バンドでした。泥くささを持つサザン・ロックのバンドと思われがちですが、実はアメリカのロック・バンドの演奏がプロフェッショナルなレベルに到達する先駆けとなったバンドのひとつ。まして本作はライヴ録音、プロ級の妙技がこれほど伝わってくるレコードもありません。

■夭折したデュアン・オールマンが残した生涯きってのギタープレイ

レコード2枚組7曲入りというこのレコードの構成には相当な作為を感じます。冒頭の3曲はすべて12小節ブルース。恐らく南部音楽という需要などを考えての曲順で、アルバム前半で形作られるイメージはサザン・ロックのステレオタイプに見事に合致します。

しかし4曲目以降はガラリと様相が変わり、フュージョンやプログレと聞き間違えるほどのテクニカルな長尺なセッションです。もしこのアルバムを逆順で聴いたら、印象はまったく変わるのではないでしょうか。

セールスを考えた冒頭部分とは違う、このアルバムの肉となる高度なセッションのフロントに立つのが、デュアン・オールマンです。アンプリファイした野太い音で炸裂する彼のスライド・ギターの凄さは、エリック・クラプトンをすら食ってしまった「いとしのレイラ」が有名ですが、あの演奏がアルバムの大半を占めるのですから、名盤と呼ばれるようになったのも当然だったかも知れません。

デュアン・オールマンはこのアルバムがリリースされた3か月後に死んでしまい、またこれ以前に発表されたアルバムはスタジオ録音で長尺なアドリブパートを持たないため、これが最初で最後のデュアン・オールマンが縦横無尽に演奏したアルバムとなりました。

■レコード高価買取に関するあれこれ

本作は71年3月に行われたライヴ4セットからセレクトされていますが、後年にオリジナル盤に収録されなかった録音を追加するなど、さまざまに形を変えてリリースされました。また、次作『Eat a Peach』にも、やはり同ライヴからセレクトされた曲が収録されています。これら録音をすべて聴きましたが、個人的には最初のオリジナル盤に優るものなしと感じました。セッションは長すぎると聴いていてだれるのですよね。ロックのライヴ盤のデラックス・エディションの類いでは同様の事を思う事が多く、好きだから聴いてしまうのですが、いざ聴けばカットされたものにはカットされるだけの理由があったのだと思う事が多いです。

このレコードはカプリコーンというマイナーレーベルからのリリースで、USオリジナル盤はレーベルがピンク、現在でも高額で買取りされています。他にも、UKアトランティック盤なども海外では人気があります。

もし、オールマン・ブラザーズ・バンドのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。