ビートルズやローリング・ストーンズといったバンドがブレイクし、60年代のロック/ポップス・シーンを席巻したブリティッシュ・インヴェイジョンの一角をなしたグループがヤードバーズです。エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジといったロックに残るギタリストを3人も輩出したことでも有名です。ローリング・ストーンズと同じクロウ・ダディ・クラブのレギュラー出演バンドで、ブルースを志向した初期からハードロックの礎を築いた後期まで、バラエティに富んだ音楽を演奏しました。

今回は、そんなヤードバーズの名盤や高額買取りレコードを紹介させていただこうと思います。

■Five Live Yardbirds (Columbia, 1964)

ヤードバーズのデビュー作、クラブでのライブ録音です。ブルースの名曲のカバーが目立ちますが、ほとんどの曲をアップテンポで演奏しているので、むしろR&Bに近い音楽に仕上がっています。煽るような演奏を受けた観衆の嬌声がすさまじく、相当な人気を集め、満を持してのデビューであったことが伺えます。

聴きどころはキース・レルフのブルースハープとエリック・クラプトンのギターで、このふたつは同時代のブリティッシュ・ビート・バンドでは抜きん出ていると言えるのではないでしょうか。

エリック・クラプトン初期の演奏を聴ける事もあり、恐らくヤードバーズでもっとも有名なレコードではないでしょうか。世界中で何度も再発され、ジャケット違いを含むバージョン違いが大量に存在します。中でもコロンビアによるUKオリジナルは高額で、マトリックス・ナンバーが若いものだと1万円超えは当たり前、2万円近い値をつける事もあります。また、日本のOdeon がリリースした赤盤も高額化しやすいです。

■Sonny Boy Williamson & The Yardbirds (Fontana, 1965)

伝説のブルース・ハーピストのサニー・ボーイ・ウィリアムソン2世とのライブ共演盤です。ヤードバーズがサニー・ボーイのイギリス公演のバックバンドを務めた形で、サニー・ボーイ2世のヴォーカルとハーモニカのパフォーマンスは圧巻の素晴らしさです。

60年代のブリティッシュ・ビート・バンドは、合衆国のフィフティーズからブルース/R&B までの音楽をカバーし発展させた点に特徴のひとつがあります。レコード会社が一般受けしやすいポップさを求める一方で、演奏に入り込んだバンドやファンは黒い音楽を求めたようです。本作は初期ヤードバーズが本気で志向した音楽を最もストレートに表現したアルバムではないでしょうか。

ヤードバーズのパフォーマンスでの聴きどころは、T・ボーン・ウォーカー調のモダン・ブルースを弾ききったエリック・クラプトン。65年当時のブリティッシュ・ビート・バンドで6度と9度を使ったテンション・ノートを織り込んだプレイヤーは他にいなかったのではないでしょうか。このモダン・ブルース調のアプローチ、クラプトンは後年のライブ盤『E.C. was here』でさらに洗練させます。

このレコード、リリースされた国によってレーベルが変わります。買取り価格にも影響するほど高額化するのはフォンタナ盤の65年UKオリジナルで、状態とマトリックス番号によっては2万円超えとなる事もあり、『Five Live Yardbirds』以上のプレミア状態になっています。一方、同曲・同ジャケットであるにもかかわらずマーキュリーUS盤はあまりプレミア化していないようです。後年に未発表音源を大量に追加したCDもリリースされました。

■Yardbirds (Columbia, 1966)

通称『ロジャー・ジ・エンジニア』、ジェフ・ベック在籍時の貴重なアルバムです。R&Bを進化させた曲、アイドル路線に走ったような曲など、バラエティに富んだ内容です。サステインが長く単旋律でも図太い音で聴かせてしまうギターのサウンドメイク、ミュート・カッティングだけのソロの組み立てや「Jeff’s Boogie」での独り舞台となるギター演奏など、聴きどころはやはりジェフ・ベックです。

このレコードも世界中で何度となく再発され、バリエーションが多いです。66年のコロムビア盤UKオリジナルは白ジャケットのモノラルで、状態さえ悪くなければ5000円超え、良いものとなると1万円台後半に達する事もあります。同仕様の70年日本Odeon盤も帯つきとなると人気です。

US盤は『Over Under Sideways Down』のタイトルがつけられてリリースされ、モノではなくステレオ、ジャケットも絵ではなくメンバーの写真となります。ジャケットのデザインの美しさやレア度もあってか、買取り価格としてはこちらの方が高騰しているようで、高額のものを目にする事があります。

■Live Yardbirds featuring Jimmy Page (Epic, 1971)

ジミー・ペイジ在籍時のライブ録音です。ヤードバーズがすでに解散したレッド・ツェッペリン全盛時にリリースされました。レッド・ツェッペリンのファーストアルバムで演奏された「Dazed and Confused」、またツェッペリンのライブ定番曲「White Summer」がすでに演奏されており、フィフティーズやブルースのコピーバンドがひしめいていたブリティッシュ・ビートが次の段階に踏み込んでいたことが分かります。ジミー・ペイジのギターはもとより、キース・レルフのハープも素晴らしく、個人的にはこのレコードこそヤードバーズ最高傑作と思っています。

昔から超プレミアレコードとして知られている1枚で、一時は数万円超えも当たり前の状態でしたが、近年は一時の過熱は過ぎました。それでも人気も評価も高いまま高額を維持していて、モノクロジャケットというたいへん珍しいレコードも存在しています。

■アルバムごとにレーベルを移った事が日本でのレコードのレア化・買取り価格の上昇に影響か

今回は紹介しきれませんでしたが、ヒット曲「For Your Love」を収録したエピック盤『For Your Love』、ジミー・ペイジ在籍時のアメリカ発売のスタジオ録音盤『Little Games』など、ヤードバーズは他にも良レコードを発表していて、それぞれバリエーションや状態によって高額がつく状態となっています。

ヤードバーズの活動期間は64年から68年と短期間ですが、この期間に3つのレコードレーベルを渡り歩いています。これでレコード会社の宣伝が散漫になったか、宣伝も流通も安定せず、日本への紹介が安定しなかったのではないかと思われます。ザ・フーやアニマルズと同様、音楽そのものは素晴らしかったのにディストリビューションの不具合から当時の出回り数が制限されたのはたしかで、それが現在のプレミア化に繋がっているのかも知れません。

もしヤードバーズのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。