CDの登場で一時は絶滅危惧種にまで追い込まれたアナログ盤のレコードですが、ダウンロードやストリーミングで手軽に音楽を聴くことが出来る時代になった今になって、ふたたび人気を得ています。アナログのあたたかく深みある音が良い、大きなジャケットがたまらないなど、色々な理由があるのでしょうね。

CDやストリーミングといったデジタルに比べると、アナログであるレコードは良くも悪くも手間がかかります。少なくともレコードプレイヤーは必要、プレイヤーの調整も最低限はしなくてはなりません。レコード針も定期的に交換する必要があり、レコード盤も、最低でもホコリを払うぐらいはしないとパチパチというノイズ(通称チリパチ)が発生してしまいます。さらに手入れを怠ってカビなどを発生させてしまうと、音自体も劣化します。

そんなレコードのクリーニングですが、方法には諸説あります。色々な方法や製品があるために初心者の方は迷われるでしょうし、ベテランの方も「良い」と勧められた方法を試したものの手痛い失敗となった経験を持つ人は少なくないのではないでしょうか。

今回は、レコードのクリーニング方法をお伝えさせていただきたいと思います。

■その1:乾式レコードクリーナーを使う

定番中の定番方法です。「レコードクリーナー」という名称のベルベット状のウェスついた器具を使い、レコード盤の目に沿ってレコードについたホコリを取る方法です。有名なレコードクリーナーとして、世界的なレコード針メーカーであるナガオカが製造している「アルジャント」という製品があります。

ただし、この方法は「静電気が発生しやすいためについたホコリを取りにくいレコードからホコリを取っている」のが主であって、正確にはクリーニングとは違うかもしれません。

合わせ技として、レコード盤専用の静電気防止スプレーを吹いてから乾式レコードクリーナーでホコリを除去する方法があります。視聴させてくれた昔のレコード店は、この組み合わせで静電気を払ってから聴かせてくれるところが多かったです。

■その2:湿式レコードクリーナーを使う

乾式レコードクリーナーを「乾拭き」とすれば、湿式レコードクリーナーはいわば「水拭き」です。ただし使うものは水ではなく、レコード専用の洗浄液です。簡単にいえば、乾式クリーナーのベルベット様のウェス部分にレコード洗浄液を沁みこませて拭きます。湿式クリーナーは各社から出ていますが、洗浄液を垂らし込む穴が開いており、そこから洗浄液を数滴ほど注入し、ウェス全体がうっすら湿ったらレコードを拭く、という方式のものが多いです。これは洗浄液野村が出来なくするためでしょうが、クリーナー全体が沁みるまでに時間がかかるため、私は直接ウェス部分に洗浄液をつけてしまう事があります。そうする人は少なくないでしょうが、その時はなるべく液ムラが出来ないようにするとより良いかと思います。

洗浄液や静電防止スプレーなど、なにかをレコードにつけてクリーニングする方法を取る場合の注意点は、最後にクリーニング液が残らないようにする事です。液をつけすぎる、乾く前にレコードを聴いてしまうと、レコード針がスリップするなどのトラブルを起こしかねません。また、湿気が残ったまましまうと、カビの原因にもなります。

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■その3:中性洗剤で拭く

水で薄めた中性洗剤を使い、ぞうきんで拭きとる方法です。やり方はかんたんです。中性洗剤を水で薄めたものをぞうきんに湿らせ、レコードの溝に沿って拭きます。CDと違い、アナログのレコードは「溝にそって拭く」が大原則なので注意してください。

拭き終わったら、今度は水だけ湿らせたぞうきんで拭きます。最後に乾いたぞうきんで拭き、乾かして終了。汚れが目立たないレコードの場合は、中性洗剤を使う工程を飛ばして水拭きだけの場合もありました。

私がレコードを聴き始めた頃は、乾式もしくは湿式でのクリーニングがポピュラーだったため、この方法をはじめて知った時はと驚きました。「そんな暴力的な方法で良いのか」と思われるかもしれませんが、私がこの方法を知ったのは、若い頃にアルバイトした東京の支店をいくつも持つ中古レコード店での事です。店がひまになると、社員の方から「一緒にレコードを拭こうか」と声をかけられ、色んなレコードを一緒に拭いたものでした。原始的な方法ですが、曇ったレコードも目に見えてきれいになる事に驚きました。不安かも知れませんが、レコードの専門業者が実際にそうやってクリーニングをしているので、ぜひ一度試してみてください。専用の洗浄液を使うまでもない汚れの場合は、これで充分です。

■その4:その他のレコード洗浄液を使う

中性洗剤でのクリーニングのレベルアップ版で、湿式クリーニングのバリエーションです。ようするに、洗浄液とウェスのふたつを入れ替えたものです。こうなると両者の組み合わせは多彩になり、どちらも手軽な価格なものから高額なものまであるので、様々な事情から勘案するかと良いと思います。

参考に、大定番のもの書いておきます。洗浄液としては、昔から大定番となっているナガオカ製のレコードスプレー「Cleartone 558」、またはLEIQUA製の洗浄液セット「バランス・ウォッシャー33」。ウェスとしては、ガーゼ状の使い捨てレコード用クリーニングクロス、または楽器用や洗車用のクロス。少なくとも、ぞうきんよりは盤に傷がつきにくくなります。

私は、普段は乾式でクリーニング、少し盤面が曇って感じるとレコードスプレーを盤面に直接かけてヤマハの楽器用ウェスで拭いています。ただしスプレーを盤面に直接吹きかけると、かけたところに液が多くついてしまって拭いてもふき取りきれず、スプレーむらを起こしかねませんので、慣れないうちはウェスにつけてから拭いた方が確実かも知れません。

■その5:クリーニングマシン

これは業者あるいはマニア向けの方法ですが、レコード専用のクリーニングマシンというものがあります。私が知っているものは20万円近くするドイツ製のもので、自動で洗浄してくれます。自分では使った事がないもので迂闊なことは言えないのですが、所有している方によると、「レコードの大敵であるカビの洗浄にはこれが一番効いた」との事でした。

■その6:木工用ボンド!

これは有名ですがリスクもある方法ですので、自己責任でお願いします。レコード盤面に木工用ボンドを塗り、乾いたら剥がします。汚れを強引に剥がしとるので、クリーニングマシン等を使わない場合の最強技でしょうが、ボンド代が高くつく事、作業スペースや時間を取られる事、レーベル面にボンドがつくなどのリスクがあるなど、ここ一番でのいちかばちかの方法と思っておいた方が無難かもしれません。

■状態の良いレコードは買取り金額にも影響する?!

レコードのクリーニングをすると、以前は曇っていたレコード盤から汚れが落ち、虹色に輝くのが分かります。レコードを売る際は、状態も査定に影響します。すべてのレコードをクリーニングするのは大変でしょうが、高額での買取りを見込める「この一枚」という大事なものは、クリーニングして買取りに出すと査定が変わってくるかも知れません。アナログは手間がかかりますが、手間をかけると良くなるものなので、そこが楽しみでもあります。どうぞ、レコードを良い状態に保って、すばらしいレコード・ライフを楽しんでください!