アメリカのエンターテイメント音楽だったジャズは、40年代に生まれたビバップによって一部モダン化しました。しかしビバップの流行は長く続かず、50年代にはいるとウエストコーストの白人ジャズに人気を奪われ、クラシック・ジャズとモダン・ジャズ、そして中間派が共存する時代となります。そんな中、50年代なかばのイーストコーストでビバップの流れを汲んだハードバップが登場、これでジャズは完全にモダン・ジャズの時代となりました。

そのハードバップ誕生のきっかけと言われるのが、マイルス・デイヴィスによるDIGセッションと、アート・ブレイキーによるバードランド・セッションです。そして後者のセッションの目玉となったのが、弱冠23歳の若手トランペッターであったクリフォード・ブラウンの驚異的な演奏でした。

超絶的なインプロヴィゼーションに支えられたビバップは、真似しようと思っても出来るものではなく、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーといったミュージシャンの専売特許と思われていたものが、パーカーやガレスピーからも一目置かれるブラウニーの登場によって息を吹き返し、ハードバップとして蘇ったのでした。

今回は、ハードバップの申し子クリフォード・ブラウンの名盤や高額買取レコードを紹介させていただこうと思います。

■Clifford Brown / Memorial Album (Blue Note, 1956)

クリフォード・ブラウンのリーダー作としてもっとも古い録音です。ブラウニーのソロはすばらしい切れ味で、まだリーダーアルバムも発表していない20歳そこそこの若者が、アート・ブレイキーをはじめとした先輩ミュージシャンを圧倒していくさまは圧巻です。編成はクインテットまたはセクステットですが、これはディレクターのアルフレッド・ライオンが、ソロを吹き始めると止まらなくなるブラウニーに制限をつけるために編成を大きくしたという逸話が残っています。

天才トランペッターのリーダー作をいち早く録音したのはブルーノートでした。このレコードはふたつのセッションを集めたものですが、録音はいずれも1953年です。ブラウニーがブレイクするきっかけとなったバードランド・セッションより先にリーダー・アルバムの録音が行われている所に、ブルーノートの創設者アルフレッド・ライオンの慧眼を知る思いがします。

この12インチLPレコードは、もともと10インチLPレコードとして発表されていた『Clifford Brown / New Star on the Horizon』と『Lou Donaldson, Clifford Brown / New Faces-New Sounds』をカップリングする形で作られました。ブルーノートの10インチLPレコードは、その貴重さゆえにほとんどすべて高額買取対象となるほどの人気ですが、ブラウニーの作品は中でも人気が高く、高額買取が見込めます。また12インチLPレコードも、人気のブラウニー作品というだけでなくブルーノートの名シリーズとなった1500番台の1枚でもあることで、USオリジナル盤はやはり高額での買取りが見込める1枚です。

■Clifford Brown And Max Roach ‎/ Study In Brown (EmArcy, 1955)

1954年より、クリフォード・ブラウンとマックス・ローチは双頭バンドとしてブラウン=ローチ五重奏団を結成、エマーシーに4枚のアルバムを残しました。そのすべてが名盤と言ってよいほどの素晴らしい演奏ですが、中でも人気が高いのがこの作品です。

レコーディング・セッションという事もあるのか、ブラウニーもローチも演奏がタイトで、ソロもきれいにまとめています。遊び心も満載で、「Take the A Train」では、汽車が徐々に速度をあげて発車していくさまを模したアンサンブル。これでアルバムを締めくくるぐらいですから、超人的な演奏ながらもほほえましく感じてしまう楽しい音楽です。

人気タイトルだけに、LPレコードであればどれも一定以上の買取価格が見込めます。それでも特に人気なのは55年の初期エマーシー盤で、これはEmArcy青ラベルである点が目印になります(58年の再プレスはオレンジラベル、それ以降はマーキュリー表記がつくなどの違いがあります)。また、61年のUSリイシュー盤である青ジャケットも、珍しさからかいい値段がつくことがあるようです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

■Clifford Brown And Max Roach ‎/ The Best Of Max Roach And Clifford Brown In Concert! (GNP, 1956)

ブラウン=ローチ五重奏団はブラウニーが急逝したために短命に終わったグループでしたが、別の言い方をすると、バードランド・セッションでブレイク以降のブラウニーのメイングループはこの五重奏団でした。このレコードは、この五重奏団が残した数少ないライブ盤。スタジオ録音ではタイトに、そしてまとまりの良い音楽に仕上げていたバンドが、ライブではこれでもかと言わんばかりの爆発的なプレイを聞かせます。A面3曲目「I Get A Kick Out Of You」は、ハイノートにヒットするブラウニーの高速のソロも、レコーディング・セッションでは聴かれなかったローチの押しつぶしてくるような圧巻のソロも、このグループが残した録音の中で最上のものではないでしょうか。

■夭折して活動期間の短いクリフォード・ブラウンのレコードは、買取りも人気

ビバップの巨人たちに匹敵する激しい演奏で、初期ハードバップのスタープレイヤーとなったクリフォード・ブラウンでしたが、1956年にピアニストのリッチー・パウエルとともに自動車事故で他界しました。「クリフォードが生きていたら、ジャズの歴史は違うものになっていた」と言われるほどの逸材でしたが、録音として残っている活動期間はわずか3年です。それだけにオリジナルのレコードは、リーダー作はもとよりサイドマンとして参加したものも一定の買取り価格を期待できるものが多いです。

もしクリフォード・ブラウンのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。