モダン・ジャズ黄金期といわれる50年代、アメリカ西海岸ではウエスト・コースト・ジャズが、東海岸ではイースト・コースト・ジャズが流行しました。そしてイースト・コースト・ジャズで主流となったスタイルが、ビバップの流れを汲んだハード・バップやファンキー・ジャズと呼ばれる音楽です。白人によるアンサンブル重視のエレガントな音楽だったウエスト・コースト・ジャズに比べ、イースト・コーストのジャズはアフリカン・アメリカンによる即興演奏重視の熱い演奏が持ち味でした。以後、ジャズの流れはイースト・コーストの音楽を受け継ぐ形で発展していきます。

ハード・バップ/ファンキー・ジャズ流行の一翼を担ったのが、ドラマーのアート・ブレイキーがリーダーを務めたジャズ・メッセンジャーズでした。ジャズ・メッセンジャーズはブレイキーのドラムの熱いプレイばかりでなく、テーマ部分での管アンサンブルの見事さ、名プレイヤーを数多く輩出した名ソロイストたちのアドリブも売りとなり、ハード・バップのブームが終わった後も人気コンボとして長く活動をつづけました。

今回は、そんなジャズ黄金の50年代から長く活動をつづけたアート・ブレイキーのアルバムの中で、名盤の評価を受けるとともに、高額での買い取りが見込めるレコードを紹介させていただきます。

■Art Blakey / A Night at Birdland vol.1 (Blue Note, 1954)

■Art Blakey / A Night at Birdland vol.2 (Blue Note, 1954)

マイルス・デイヴィスのDIGセッションとともに、ハード・バップの始まりとなった名ライブセッションの録音です。特筆すべきはクリフォード・ブラウンの参加で、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーといったビバップの大巨人たちが一目置いたというそのプレイはさすがの演奏です。他のプレイヤーよりもソロを多く貰うなど、明らかに特別扱いを受けており、噂の先行していたブラウニーのプレイがついに衆目の知る所となった記念すべきアルバムでもあります。

このレコード、1954年発売時は10インチ盤で、1集2集ともに格子状に写真を汲んだジャケットです。ちなみに、10インチ盤は第3集も存在しています。レア度も手伝ってか10インチ盤は間違いなく高額です。ちなみに、ジャズ熱の高い日本では、なんと1999年にアナログ10インチ盤が限定復刻されています。

そして有名なブルーノート1500番台となった12インチ盤の1・2集は1956年になってからの発売。言わずと知れたブルーノートの名シリーズの1枚なので、USオリジナルは高額必至です。また、このレコード自体が人気盤である事もあり、USオリジナルでなくとも一定以上の評価をされています。

■Art Blakey And The Jazz Messengers / Moanin’ (Blue Note, 1958)

ハード・バップとファンキー・ジャズの区別ははっきりしたものではないようですが、あえてそれを定義するなら、「ブルース・ナンバーなどを加えて泥臭さを出したハード・バップをファンキー・ジャズと呼ぶ」といったあたりになるでしょうか。モダン・ジャズの名盤としてまず名前が挙がる1枚でもあり、ファンキー・ジャズの代名詞のようなこのレコードは、たしかに泥臭さや黒っぽさを強く感じるアルバムです。有名な表題曲「モーニン」も、もしこれをヴォーカル・ナンバーにしたら、ブルースやソウルといっても通じてしまいそうなアーシーさです。そんな中で、このアルバムに参加したリー・モーガンの突き抜けるようなトランペット・ソロが光っています。

名盤の宝庫として名高いブルーノート4000番台の1枚だけに、オリジナル盤は高額で取引されています。この時代のブルーノートは海外プレスを認めなかったので、人気の割に数が少なく、存在する数以上の人気もあってか、70年代に入ってからの各国盤の再プレスも、レコードは人気です。

■Art Blakey & The Jazz Messengers / Free For All (Blue Note, 1965)

メンバーの出入りが多い事で有名なジャズ・メッセンジャーズですが、60年代前半はマイルス・デイヴィス・クインテット参加以前のウェイン・ショーターが参加しており、モードをはじめとした新しい技法を使うショーター期は、作曲面で見ると恐らくジャズ・メッセンジャーズ最高のラインナップでした。

ショーター参加のアルバムは『Mosaic』や『Caravan』など名盤ぞろいですが、ショーターのほか、フレディ・ハバード(トランペット)、カーティス・フラー(トロンボーン)、シダー・ウォルトン(ピアノ)といったメンバーを揃えた本作は、中でも抜群のパフォーマンスです。それぞれのソロも凄いですが、60年代になるとアート・ブレイキーのドラムが更に切れ味を増していて圧倒されます。アート・ブレイキーのロールは「ナイアガラ・ロール」の異名をとるほどの迫力ですが、本作収録の「Free for All」での長いドラム・ソロはその白眉、圧巻です。

ブルーノートでのレコード番号4170となるこのレコードですが、初回からモノ盤とステレオ盤のふたつがプレスされています。これも人気のアルバムで、レコードであれば一定以上の査定が見込める1枚です。

■モダン・ジャズの名コンボは名プレイヤーの養成所でもあった

アート・ブレイキーは、ドラマーとしてだけでなく、バンド・マスターとしても才覚を発揮したミュージシャンでした。ハード・バップの幕開けを告げたクリフォード・ブラウンやホレス・シルヴァー期、ファンキー・ジャズの代表格となったリー・モーガンやボビー・ティモンズ期、新主流派の一角を担う事になったウェイン・ショーター期、フュージョン時代に従来の4ビート・ジャズを復権させた新伝承派のマルサリス兄弟期など、その時々でリーダーの他に音楽監督を立てたのも、リーダーとしての才覚のひとつでしょう。プレイヤーとしてだけでなく、リーダーとしてのこの資質が、ベテランの域になっても音楽がその時々の最先端を組み込めていた理由なのかも知れません。

もし、そんなアート・ブレイキーのレコードを譲ろうと思っていらっしゃる方がいましたら、その価値が分かる専門の買い取り業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。